「父と子と聖霊の名によって、汝(なんじ)にバプテスマを授く」。私たちの多くは、自分が洗礼を受けたとき、また家族や友人の洗礼式に立ち会うとき、このセリフを幾度となく聞いたことがあるだろう。しかしメキシコでは、キリスト教徒が信仰のために迫害されることが多く、イエスに従うという決断は、私たちの多くが経験したことのないような重みを伴う。
メキシコのチアパス州で最近なされた洗礼式では、地元の教会が賛美を歌う中、若い信者たちがイエスへの信仰を告白した。「金の羽ペンで私の名は記され、私の名は神の書に記されている」と、彼らは歌った。
この洗礼式は、一見なんの変哲もない夏の日の野外洗礼式だが、洗礼を受けた先住民族のナピテの共同体の信者は、今も大きなリスクを負い、共同体からの圧力にさらされている。
4年前、ナピテの共同体に住む5組の家族がキリストを信じた。彼らはナピテの土着信仰や儀式に背を向けた代わりに、イエスに信仰を置き、忠誠を尽くす道を選んだのだ。そのため、彼らは共同体から追放され、全てを捨てざるを得なくなった。
そこである宣教団体の現地パートナーが、彼らとナピテとの間の仲裁に入り、ナピテの指導者たちと話し合うことになった。1年にもわたる交渉の末、この5家族はナピテに戻ることができた。
しかし彼らは「キリスト教信仰の実践はナピテの外ですること、そしてナピテの共同体で教会は立てない」と同意することに署名するまではできなかった。つまり、洗礼式や礼拝を含め、教会として行うことは全て、彼らが住み、働いている場所から離れたところで行わなければならないというのだ。
彼らは1時間半もかけて移動し、現地パートナーが指導する聖書的トレーニングに参加している。彼らはナピテの共同体で仕え、平和的に生きることに焦点を当てている。
しかしナピテの信者たちは、神に信頼し従うという従順を通して、神がナピテの中で働かれるのを見ている。反対の圧力の強いナピテの中で、新たに2家族がキリストに希望と信仰を置くようになったのだ。そしてこれらの新たな信者たちの洗礼式が行われたのである。このバプテスマは、福音は誰にも止められず、神の国はすでに動き出しているという確かな証拠なのだ。
ナピテの教会と家族のため、この教会の信者が増え続け、想像を絶するような方法で拡大していくように祈ろう。地元の有力者や地域社会の人々が、この信者たちの互いの愛、ナピテへの愛を見て、神が彼らの心を開いてくださるように。
新しく洗礼を受けた信者たちのために祈ろう。彼らの信仰が深く根を張り豊かになり、若い信者たちが、仲間や当局の圧力から守られるように。迫害が訪れたとき、彼らが洗礼を受けたこの日と彼らの決断を思い起こすことができるように祈っていただきたい。
■ メキシコの宗教人口
カトリック 77・7%
プロテスタント 11・2%
無神論者 3・6%
土着の宗教 1・2%