トルコ南東部のシリア国境近くで6日に発生した地震により、AFP通信によると、9日までに死者は両国で合わせて2万人を超えた。多くの犠牲者が出ていることを受け、各国政府は支援を表明し、既にさまざまな団体が被災地で支援活動を行っている。
一方、シリアで5年前から孤児たちに寄り添う活動を行っている神戸国際支縁機構の海外部門「カヨ子基金」(佐々木美和代表)によると、現地の関係者からは、「世界はなぜシリアには冷たいのか。トルコには各国が飛行機で救援物資を届けている。一方、シリアには全然と言っていいくらい救援物資が運ばれていない」というが聞こえてくるという。
カヨ子基金は、5年前にシリア北部の都市アレッポに孤児の家「カヨコ・チルドレン・ホーム」を開設。現在はその家で、シリア正教徒の夫妻が孤児たちの世話をしてくれている。その夫妻からも、地震に対する恐怖だけでなく、両国間の支援の格差に対する怒りの声が、アレッポの人々の間にあると聞くという。
シリアは2011年、「アラブの春」の影響を受けた反政府デモをバッシャール・アサド政権が弾圧したことで内戦に発展。さらに、「イスラム国」(IS)などのイスラム過激派組織の台頭により、米国やロシア、トルコなども介入し泥沼化した。内戦は今も続いており、600万人を超える難民を生み出している。
AFP通信によると、現在のシリアは主に、アサド政権支配地域、反体制派支配地域、少数民族クルド人の自治地域の3つに分かれている。地震の被災者は、ほぼ半数がアサド政権支配地域に居住しているが、残りは、反体制派が支配するイドリブ県やアレッポ県に住んでいる。欧米諸国はアサド政権とは距離を置いているため支援に消極的で、一方で反体制派支配地域に対する支援もルートが限られている状況だという。
しかし、神戸国際支縁機構理事長の岩村義雄牧師(神戸国際キリスト教会)は、シリア国民の多くはイスラム教徒であるものの、キリスト教徒との交流は日常的に行われており、「西側諸国が考えるほど対立はしていない」と話す。
カヨ子基金がアレッポに孤児の家を開設したのは、シリア正教会のアレッポ大主教グレゴリオス・ヨハンナ・イブラヒムとの約束による。
岩村牧師は2006年、京都で開催された世界宗教者平和会議(WCRP)の第8回世界大会で、イブラヒム大主教と初めて会った。その後も交流を重ね、内戦勃発翌年の12年に再会した際には、シリアのために涙を流して共に祈ったという。その時に約束したのが、アレッポに孤児の家を開設することだった。
しかし、イブラヒム大主教は13年、テログループに誘拐され、消息が分からなくなってしまう。岩村牧師は17年、イブラヒム大主教の消息が分からない状況のまま、孤児の家を開設するためアレッポに向かう。その際に降り立った隣国レバノンの空港で出会ったのが、現在孤児たちの世話をしてくれているシリア正教徒の夫妻だった。
イブラヒム大主教と交流があったという夫妻は、アレッポで家具会社を経営していた。しかし、内戦下のシリアに日本人が単身来たこと、また岩村牧師とイブラヒム大主教の友情、約束、相互理解、そして孤児の家開設に対する熱意に心を打たれ、夫妻自らが孤児たちの世話をしてくれることになったという。
今回の地震は、孤児たちだけでなく、彼らを世話する夫妻にとっても大きな試練となっている。カヨ子基金は、地震によりさらに厳しい状況に置かれている孤児たちを支えるため、100万円を目標に救援募金を行っている。集まった寄付は全額現地へ届けるとし、「今は、地震大国である日本が、戦争、地震、世界最大の難民を抱える人道悲劇を被っているシリアと共振するときです」と協力を呼びかけている。
岩村牧師は、「地震のような大きな被害が発生したときこそ、キリスト者は被災者に心を寄せ、『善きサマリア人』となることができます」とし、旧約聖書から「互いに慈しみ、憐(あわ)れみ合え。寡婦、孤児、寄留者、貧しい者を虐げてはならない。互いに悪を心にたくらんではならない」(ゼカリヤ7:9~10、聖書協会共同訳)を引用。「皆さまからの善意の心をお寄せください」と呼びかけている。
寄付は下記の口座で受け付けている。受取人の名義はいずれも「カヨ子基金」。カヨ子基金のシリアにおける活動の詳細はウェブサイトを。
■ ゆうちょ銀行の場合
記号:14340 番号:96549731
※ 通信欄に「シリア」と記載
■ ゆうちょ銀行以外の場合
店名:四三八(店番:438) 預金種目:普通預金 口座番号:9654973