神は悩んでいる者をその悩みの中で助け出し、そのしいたげの中で彼らの耳を開かれる。(ヨブ記36:15)
先日、屋久島で結婚式の司式があり、出掛けました。高速水中翼船のおかげで鹿児島市から日帰りで出掛けることができます。久しぶりに屋久島を訪れましたが、世界遺産に指定された後、ホテルや宿泊施設が増えているようです。通常の観光ホテル、和風旅館、民宿などが増えていて、船もお客さんであふれていました。
チャペル結婚式が行われたのは、都会に住む余裕のある人々のための長期滞在型の宿泊施設でした。海の見えるガーデンで行われた結婚式も東京、シンガポール、ハワイ、ロサンゼルスをネットでつないで同時中継する国際結婚ですので、海外の参加者にも分かるようにすべて英語で司式を行うという新しいタイプの式でした。
この施設で教えられた話に衝撃を受けましたが、今後の生き方にヒントになるものを得ることができました。この施設は木造のバンガローなのですが、バスルームとトイレは一流ホテル並みの立派なものでした。また、リビングの暖房は薪ストーブが用いられていました。
都会育ちのお客さんがカップルで来ると、男性に薪と羽釜とお米を渡して、朝食は自分で用意してくださいというのだそうです。薪でご飯を炊いた経験のない人は必死にネットでご飯の炊き方を検索し、四苦八苦して炊き上げるそうです。味噌汁も昆布とシイタケからだしをとり、釜戸で調理します。朝ごはんが出来上がったときにとても感激するそうです。昔は当たり前にしていたことをチャレンジすることによって自然環境のことを学べると言っていました。
お昼ごはんに出された弁当を見て、驚きました。竹の皮でおにぎりを包んだものだったからです。おにぎり2個と漬物、卵焼き、から揚げが入っていました。私が小学生の頃は遠足に行くとき、このような弁当をよく持たせられていました。おしゃれなプラスチックの容器を持っている友達をうらやましく思っていたことを思い出しました。最近では竹の皮のほうがSDGsを進めるかいわいでは最新トレンドだそうです。
屋久島では、すべての電力を水力で賄っていることも注目の一つだと言われました。高い山がそびえているおかげで水量は豊富で、水質もいいということで、屋久島の水は人気があります。24カ所の水源があり、集落ごとに水が違うということを聞いたロサンゼルスから来た女の子は、すべての水源の水をテイスティングして回ったそうです。
この宿泊施設では、ランチョンマットが必要だというお客さんには、庭先から切り出した大きな葉っぱを渡していました。今後の計画として挙げられていたのが、畑を整備して、お客さんにも土づくりや種まきに参加してもらうそうです。有機栽培した野菜をお客さんのもとに宅急便で届けるということでした。土に触れることが心の癒やしになりますので、とても注目されているそうです。
私の子ども時代には時代遅れで田舎臭いと思われていたことが、最新のトレンドになるわけですから、逆転の発想で新しい道が開けるものだと大きな学びになりました。
鹿児島の有名な観光地の一つに霧島があります。湯量豊富な温泉が売りですが、四季の変化を感じられる森の木々も心の癒やしになります。この霧島の山の上に1泊50万円というホテルがあります。自分で泊まるということなど考えもしなかったのですが、何か仕事として関わりを持てないものかと思案していました。東京の芸能人なども利用していて結婚式を行うこともあるようでした。後に社長に会う機会があったときに司式のことを相談しましたら、司式者も演奏家もすべて東京から連れてくるから地元では出番はないということでした。
このホテルも大変興味深い取り組みをしています。山を切り開いた所にホテルがあるのですが、そこで畑を作り、有機栽培の野菜を育てたり、家畜を飼ったりしているのです。その畑の世話は近所の農家の主婦の方々にパートとしてお願いしているそうです。また、所有地内の木々の手入れは農家のご主人たちに仕事として引き受けてもらっているそうです。畑の世話をしているところ、立木の手入れをしているところ、ニワトリに餌をやっているところはすべて、お客さんに公開しているそうです。富裕層の方々はそのことが珍しくて喜んで見学しているそうです。
行動的な遊びがしたい方のためには、敷地内の山や川べりをジープで走り回れるように整備して、車を貸し出しているそうです。
実はここのホテルは海外の富裕層にも人気が高く、2年先まで予約はいっぱいだというから驚いてしまいます。富裕層は1回予約したら1カ月くらい滞在するみたいです。営業はどうしているのか社長に聞いてみると、地元で雇用した女の子たちが、ドバイやカンヌなどで開催される世界お金持ちクラブのコンベンションに参加してプレゼンしているというから驚いてしまいます。
大抵、自家用機で鹿児島まで来られるそうです。空港まで車で出迎えに行っても20分もかからないそうですが、あえてヘリコプターで行き、まっすぐホテルに向かわず、桜島や錦江湾を見せるのだそうです。そして時間があれば屋久島まで飛んでいくそうです。大がかりなジオパークを提示すると大満足なんだそうです。
創業者である社長によると、このホテルは偶然の産物ではなく、実家の温泉旅館が水害のために壊滅的被害を受けてどん底に立たされ、逆転の発想で立ち上げたということでした。
私はこの2つのホテルのやり方を見て、発想の転換を迫られた気がしました。ないものを数えて落ち込むのではなく、あるものをいかに生かしていくか、自分たちの足元に転がっている宝物をいかに発掘していくかというのが問われているように思います。
日本の縄文時代は1万年続き、大和朝廷も2600年続く世界最長の王朝です。また、日本各地の神社にはシュメール文明に通じるペトログリフが岩に刻まれた状態で残されています。手で触れることのできる縄文遺跡もありますし、おびただしい数の縄文土器もあります。再生可能な資源を有効活用し、自然を大切にしていた自分たちの先祖を誇りに思い、歴史を学んでいくことで、心のゆとりが生まれてくるのではないかと思います。
ある学者が試算していたように、この国は少子化の波の中で埋もれ、のみ込まれていくような運命にあるのではないと思います。世界の人々が憧れる夢を秘めた国が私たちの祖国です。この国の人々が主にあって尊厳を保ち、世界のリーダーとなっていくように期待されていると信じます。
あなたの将来には望みがある。(エレミヤ書31:17)
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