英国国教会の小教区が所属教区に支払う分担金が、コロナ禍以前に比べて10パーセント減少していることが、英下院で明らかになった。
英国国教会に関する質問に答える中で、第2教会財務委員のアンドリュー・セルース議員(保守党)は10月末、地域の小教区が聖職者の給与や年金、住居のために自発的に支払う「小教区分担金」が大幅に減少していることを英下院に報告した。
セルース氏は、新型コロナウイルスのパンデミックが教会の献金に与える影響についての質問に答え、小教区自体の献金収入が減少したため、小教区が所属教区に支払う献金も減っていると述べた。
「2020年に教区が受け取った小教区分担金の額は、19年の水準を7パーセント下回り、この1年間では、19年の同時期に比べて10パーセント減で推移しています。教区の収入も、ホールの貸し出しやその他のイベントによる収入がなくなることで、大きな影響を受けています」
セルース氏は、英国国教会の給与予算が、第一線で奉仕する小教区の聖職者、教区事務所のスタッフ、また教会委員会や英国国教会中央行政局などの国家機関にどのように分配されているかについての質問も受けた。
この質問に対しては、「英国国教会は単一の機関ではないため、単一の給与予算はありません」と説明。その上で、2019年には、小教区の聖職者の給与と年金のために2億5500万ポンド(約390億円)が費やされ、さらに聖職者の住居と執務費に1億2400万ポンド(約190億円)、教区のスタッフに6500万ポンド(約100億円)、国の教会機関のスタッフに3000万ポンド(約46億円)を支出したと回答した。
英国国教会の危機が高まっていることについては、英ガーディアン紙(英語)が10月末に社説で取り上げ、次のように述べている。
「過去30年間で教会の礼拝出席率が40パーセントも減少していることを考えると、抜本的な措置は避けられないとみられる。パンデミックが発生する前、約5千の小教区が活動費を満たすために教区から財政支援を必要としていた。リンカーン教区では毎年300万ポンド(約4億6千万円)の運営赤字を抱えており、2025年以降は歴史的資産に頼ることができなくなるとされている。現在のモデルでは、すべての小教区に司祭がいるという古い理想は、もはや手の届くものではないようだ」
このガーディアン紙の社説に対して、読者から幾つかの手紙が寄せられた。
イングランド北西部マージーサイド州ウェストカービー在住のプリシラ・ベンチ・キャポンさんは、「英国国教会の小教区の窮状を浮き彫りにしてくれました」と同紙に感謝を示した。
「私は地元の小教区教会の評議員をしています。私たちの信徒はほとんどが高齢者で、教区への支払いのために毎月7318ポンド(約113万円)を捻出しなければなりません。さらに、オルガンや鐘、時計塔を備えた3つの美しい指定建造物の維持費、2つの教会墓地の手入れ、保険、清掃、パートタイムの管理者などの費用も必要です」
ベンチ・キャポンさんは、自分たちの教会を頼ってくる人がいれば、誰でも利用できるようにし、歓迎したいと思っているが、「それは困難なことです」と言う。「もし人々が、良好な状態の教会施設、専門性を持った聖職者、開かれたドアを望み、これ以上の閉鎖を見たくないのであれば、私たちの支払いを支援することを考えるべきです」