アルゼンチンの人権運動を指導したフェデリコ・ホセ・パグーラ名誉監督が6日、逝去したことを受け、世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ・トヴェイ総幹事は、「パグーラ監督は、過去50年間における中南米と世界のエキュメニズムの大黒柱の一人であったとともに、信仰の深い勇気ある、中南米と世界中の人権と平和主義の擁護家であった」と述べた。WCCが9日、公式サイトで伝えた。
ヒスパニック系の合同メソジスト教会は6日、スペイン語の公式サイトで、パグーラ監督が同日午後、同監督が住んでいたアルゼンチン中東部の都市ロサリオで、代償不全によって93歳で逝去したと伝えていた。
アルゼンチン福音メソジスト教会に宛てられた書簡で、トヴェイト総幹事は、WCCの議長団の1人を1998年から2006年まで務めていたパグーラ監督が、コスタリカとパナマで監督を務めていた間、すでに南米大陸で起きていた社会的・政治的な変化に極めて敏感であったことに触れた。
「パグーラ監督は中南米の民衆の『出産の時』について語り、『新しい解放の夜明け』に目覚め、神の国が人間の歴史に具現化し顕現(けんげん)することを、ご自身の教区で説いておられた」とトヴェイト総幹事は記した。
アルゼンチン北西部の都市メンドーサにあるメソジスト教会の牧師として、パグーラ監督は、1973年のアウグスト・ピノチェト(1915〜2006)による政変から逃れてきたチリ難民の受け入れを指導するとともに、同国の何千人もの人たちを受け入れた「社会的行動のためのエキュメニカル委員会」(CEAS)の創立者の1人でもあった。これらの行動はアルゼンチンの右翼集団にとっては容認しがたいものと思われていたため、75年9月4日朝、パグーラ監督の教会は爆弾で爆発させられる被害に遭った。
77年にアルゼンチン福音教会の監督に選出されたパグーラ監督は、「人権のためのエキュメニカル運動」(MEDH)の卓越した指導者を務めるとともに、WCCの中南米人権局と密接に連携し、アルゼンチンの軍事独裁政権が犯した露骨な侵害に反対した。
80〜89年の間、パグーラ監督はWCCの世界宣教・伝道委員会に参加し、宣教と神の国、貧しい人たちの教会、福音の文化化、そして宗教間対話に関する論争に貢献した。
中南米教会協議会(CLAI)議長を17年間務めた間、パグーラ監督は改宗とキリストにおける新しい誕生の呼び掛けと、南米大陸の諸民族、とりわけ貧しく欠乏のうちにある人たちのための自由と正義を求める要求を同時に保つ必要性を提唱した。
98年、ジンバブエの首都ハラレで開かれたWCCの第8回総会で、パグーラ監督はWCCの議長団の1人に選出され、それ以後、彼は中南米における「全ての暴力を克服する10年」の積極的な推進者となった。
トヴェイト総幹事は自らの書簡の中で、パグーラ監督を優れた感受性と優しさを持つ人であったと想起した。「彼は、不正義に対する彼らの拒絶や、最も貧しく寄る辺のない人たちの苦しみについての自らの嘆き、そして真に自由な人々の真の独立へと生まれ変わることを切望する南米大陸の産みの苦しみについて語る歌や詩を、私たちに与えてくださった」
そして、トヴェイト総幹事は、「私たちは、パグーラ監督の模範的な牧会のエキュメニカルで預言者的な道について、神に感謝します。それは私たちの歴史における神の言葉と行動の探求のための重要な貢献となってきたのですから」と書簡を結んだ。
なお、パグーラ監督は、アルゼンチンの軍事独裁政権下(1976〜83年)で作られた同国初の「福音タンゴ」による賛美歌「Tenemos Esperanza」(日本語訳「だから今日希望がある」 / 「希望と勇気にあふれ」、CD『だから今日希望がある〜南米の新しい賛美歌〜』、コウベレックス、2011年)を作詞したことでも知られていた。絶望のただ中にあってもイエス・キリストの故に希望があることを力強く歌うこの賛美歌は、多くの言語に訳されて幅広く歌われてきた。