福音主義であるホイートン大学(米国イリノイ州)の12人の神学者たちが質疑応答形式で寄稿した神学の入門書。原書は英語で『Theology Questions Everyone Asks: Christian Faith in Plain Language』(InterVarsity Press, 2014)。
「神はいつ、どこから来たの? イエスは神なの? それとも人なの? 本当に復活したの? 悪が氾濫する時代に、神はどこにいるの? 現代人が抱く疑問に、神学・聖書学の第一人者がお答えします!」と、本書の帯には記されている。
主な内容は、1. キリスト教とは何か、2. 聖書とは何か、3. 神とは誰か、4. 神はどのように世界と関わっているか、5. 悪や苦難の意味は何なのか、6. イエスとは誰か、7. 救いとは何か、8. 聖霊とは誰か、9. 人間とは誰か、10. 教会とは誰か、11. 私たちはいかに生きるべきか、12. キリスト教徒の希望は何か、という12の項目からなっている。
本書の編集委員で寄稿者でもあるゲーリー・バーグ(Gary M. Burge)教授とデイヴィッド・ラウバー(David Lauber)准教授は、学生を念頭にこの本を書いたとしつつも、教会にとっても助けとなり得ると記している。両氏によると、本書は「私たちの学生たちが教室で質問したがるような今日的問題」に答えたいという望みから生まれたという。
それだけに、単に学問のための神学書というよりは、実際的で実践的な内容も盛り込まれている。両氏は「私たちのより広い目的は、キリスト教を信じる人たちが―一般の信徒であれ、学生であれ―信仰において大きく成長する助けになることなのです」と記している。
『だれもが知りたい(Everyone Asks)キリスト教神学Q&A』と題する本書。訳者の本多峰子教授(二松学舎大学)はあとがきで、本書は「キリスト教の教義に初めて触れた人たちが疑問に思いそうな問題に正面から向き合っています。おそらく、そうした疑問は日本でも、キリスト教を少しだけ知っている教会外の人たちや、キリスト教に興味はあるけれどもキリスト教徒になる決断がつかないでいる人たちや、おそらく教会に通っているキリスト教徒たちの多くも共有しているものでしょう」と述べている。
訳者によれば、「この本の著者たちはキリスト教の教義に関してはかなり保守的で、ここに書いてあることはときに、現代の聖書学や宗教哲学での大多数の意見と同じではないこともあります」と記している。本書を読む人はそれがそのようなものであることを踏まえて読むことが必要だろう。
訳者は、本書の訳をする際に、できるだけ専門的な用語は用いないようにしたという。原書の副題にも”in Plain Language”(平易な言葉で)とある。それだけに訳文は、キリスト教神学の入門書としては、ある程度の予備知識があれば比較的平易であるように思われる。
本書の帯には、「キリスト教の希望は、人生やこの世から逃げることにあるわけではありません。・・・キリスト教の希望は、現在と連続した未来への希望であり、私たちがまさに今持っている体への希望なのです」という文が、本文(215、217ページ)から引用されている。本書を読むことで、読者は生きる希望を見いだすことができるだろうか。
G・M・バーグ、D・ラウバー編、本多峰子訳『だれもが知りたいキリスト教神学Q&A』教文館、2016年3月10日、238ページ、本体2800円(税別)