韓国は良い宗教市場
韓国は日本と異なり純粋な韓国宗教はなく、すべて輸入宗教だ。韓国教会がアジアで一番急成長した社会的、文化的要因はキリスト教に敵対的な伝統宗教や韓国宗教がなかったことだと思う。当時仏教や儒教はキリスト教に対抗する力がなかった。しかし日本、サウジ、インド、タイなど、伝統宗教や自国の宗教の強い国はキリスト教の成長が難しい。神道は日本にだけある日本宗教だ。人々はシャーマニズムを純粋な韓国の伝統宗教だと思っている。しかしこれもシベリアから輸入されたものだ。この民間宗教は韓国だけにあるのではなく全世界的なものだ。純粋な韓国宗教としては、19世紀にキリスト教が入ってきた際、シャーマニズムと混合した民族宗教が雨後の筍のように登場した。統一教も、キリスト教と民族主義とシャーマニズムの結合だ。最近の統計によると民族宗教の人口は2%に過ぎないと言う。
ところで、日系宗教である創価学会、天理教などの信徒が18教団192万人もいるという信じがたいニュースが報道された。創価学会は148万人、天理教は27万人に達する。最近ある教授が『韓国の日系宗教』という著書で明らかにした。日系宗教は主に経済問題、疾病問題等にアプローチする。ここに天理教の伝道用ちらしの一節を引用する。
「新しい運命の開拓の道」
疾病災難逆境等の不幸で不安と焦燥、悩みと苦痛の中に日々を過ごしながら人生に懐疑を感じる方、新しい生、幸せを追い求める方はためらわないで一刻も早く天理教を訪ねてください。(天理教 ソンタン教会)
韓国では今、英語ブームが起きている。多くの学生や若者たちが英語塾に通っている。ところが、韓国の英語塾の70%はアメリカの異端であるモルモン教とセブンズデー・アドベンチストに占領されていると言う(韓国教会はセブンズデー・アドベンチストを異端と見る)。筆者は最近、地下鉄でモルモン教宣教師に会った。彼によれば韓国で働くモルモン教の宣教師は500人だと言う。彼らは青年たちに近寄り、英語を学びに来なさいと勧める。英語が良い宣教の武器になっている。
イスラムは韓国の宗教市場を正確に分析している。キリスト教が成長すればイスラムも可能性があると判断する。重要なのは、彼らが韓国国内のイスラムに友好的な人口を300〜400万と推定することだ。このような推算の正確な根拠はわからないが、うわさによれば韓国の左翼人口を400万あるいは500万と見て、これらを伝道の対象にするというのだ。
イスラムは韓国より日本に先に入って来たし、イスラム研究やイスラム協会などは日本がもっと強い。すでに20世紀初期には、日本でイスラムに改宗した人々がいた。イスラムに関する書物も早い段階で出版された。渡辺己之次郎は大正12年に『回教民族の活動と亜細亜の将来』という本を、若林半は昭和13年に『回教世界と日本』という本を著述した。これらの書物はイスラムをほめたてながらよく紹介している。
イスラムが韓国に入って来たのは朝鮮戦争(1950−1953)の時だ。戦争に参加したトルコ軍人がイスラムを伝えた。18世紀後半に日本はトルコととても近い関係にあった。そのため日本には多くのイスラム教徒がいる。第2次大戦時は日本軍人の中にもイスラム教徒がいた。しかし、この日本軍人がメッカに向けてお辞儀をし、すぐに東京(天皇)を向いてお辞儀をすることを見た中東のムスリムたちは、非常にがっかりしたと言う。イスラムはアラーと天皇を絶対同一視しない。文化的に難しいと判断したのか、日本のイスラム化をあきらめたと伝えられる。代わりに韓国をイスラム国家とすることに全力をつくしているように見える。過去のイスラム宣教の歴史から推論しなければならない。
イスラムは全般的に、すでにキリスト教の影響が強い国を武力で征服してきた。キリスト教がよく成長すればイスラムも可能性があると信じているようだ。この事実は、韓国でもすでに多くのイスラム教徒たちが牧師や信徒たちを対象として熱心に伝道することからも見てとれる。韓国ではすでに、パキスタンと中東から来た多くのムスリムたちが韓国女性と結婚している。ムスリムたちが結婚できる非ムスリム女性はクリスチャンとユダヤ人だけだ。無神論者や偶像崇拝者(仏教やヒンズー教など)とは結婚することができない。イスラムは一夫多妻を許容する。同時に多くの子どもを生む。移民、結婚、伝道、多産はイスラムを拡散させる良い手段になっている。ヨーロッパやアメリカ、オーストラリアはこのような方法でムスリム人口が急増している。
―国家をイスラム化する戦略を、ラクダと天幕で比喩しよう。砂漠は昼間熱くて夜は寒い。夜中にラクダが頭を天幕の中に入れ、「殿さま、寒くて頭だけ天幕の中に入れてください」と懇請する。主人は承諾する。すると次は足が入り、最後は全身が天幕の中に入って来る。結局場所がなくなり、主人が押し出されてしまう。
【全浩鎭(ジョン・ホジン)】 1940年、大阪生まれ。韓国・高神大学、同大学院卒業、米国・ウェストミンスター神学校神学修士課程修了、米国・フラー神学大学宣教学博士課程修了、英国国立ウェールズ大学哲学博士課程修了。その後、高神大学学長、平澤大学学長、亜細亜連合神学大学大学院院長、トーチ・トリニティー神学大学院教授などを歴任。現在は、イスラエル及びイスラムネットワーク会長、韓半島国際大学教授。著書に、「宣教学」(85年)、「宗教多元主義と他宗教宣教戦略」(92年)、「アジア・キリスト教とミッション」(95年)、「人種葛藤時代と未伝道種族ミッション」(00年)、「イスラム―宗教家イデオロギーか」(02年)、「文明衝突時代のミッション」(03年)、「転換点に立つ中東とイスラム」(05年)(いずれも韓国語)などがある。