「聖書から見た職業観」をテーマにしたセミナーが2月28日、東京・御茶ノ水のお茶の水クリスチャン・センターで開催された。
セミナーを主催したのは、日本国際飢餓対策機構東京事務所。国際協力に興味があり、将来、途上国支援などの活動に参加を考えている人々を対象に、飢餓やその原因、また飢餓解決のために何ができるのかを考える時間を持つことを目的としている。この日は、20代から30代の男女10人が集まり、グループディスカッション形式で、聖書を土台に働くことの意味を学んだ。
セミナーの講師は、同機構の啓発総主事である田村治郎氏。グループディスカッションでは、「なんで人は働くのか?」「人の役に立つ仕事とは何か?」について、普段から各自が思っていることを語り合い、最後にはリーダー役がまとめて発表した。
田村氏から、「クリスチャンとしてではなく、自分自身の意見を出すように」と言われていた参加者は、「なんで人は働くのか?」という問いに、「お金のため」「自己実現のため」「与えられた役割分担のため」などと、さまざまな意見を出した。また、「希望する職業に就いた途端、目標を見失うことがある」と、実際に自分の周囲を見て感じた意見も出された。
「よく人の役に立つ仕事がしたいと言われるが、人の役に立つ仕事とは何か」という、田村氏からの問い掛けに対しても、参加者は熱心に議論した。特に、ある参加者からの「麻薬取引や人身売買といったものも、人の役に立つ仕事といえる場合もあるのでは」という意見に対して、活発に意見が交わされた。「麻薬は合法化されている国もあり、一概に悪い仕事とはいえないのではないか」といった意見もあれば、「悪い商売は『仕事』ではない。ビジネスだ」「神様が悪いということをやること自体、人の役には立たない」などさまざまな意見が飛び交った。
グループディスカッションのあと、田村氏から、聖書に記されている「働くこと」に関する箇所が示された。田村氏は「大切なのは、その仕事が神からの召しであるかどうか」だと話す。「どんな仕事であっても、それが神からの召しであれば尊く、その仕事を通して神の栄光が表される」と、コロサイの信徒への手紙や、マタイ・ルカによる福音書の御言葉を通して、働く意味について語った。
また、神の召しによる仕事には、「神の国の実現」という明確な目的があることにも触れた。「その仕事を何のためにやっているのか」と聞かれたとき、単にやっている仕事の内容の説明であったり、自分の名誉のためなどではなく、「神の国を建てるお手伝いをしています」と答えることができるだろうか、と田村氏は問い掛けた。そして、「神は、各自の生き方に対する明確な召しを持っておられる。それをぜひ祈り求めてほしい」と訴えた。
参加者の一人で、看護大学に通うという女性は、「将来仕事が忙しくなって教会に行けなくなったらどうしようかと心配していた」と、看護士になるための勉強をしながらも不安を持っていたという。しかし、この日のセミナーに参加して、「教会に行ける・行けないが問題ではなく、神様からの召しである仕事をしているかが大切なのだと思った。働くことの一番コアとなることが分かってよかった」と感想を述べた。
今回、「働くこと」をテーマにしたのは、現在の若者たちが働くことに夢を持ってないと思ったからだと田村氏は説明する。安定や休暇の多さで仕事を選ぶのは悪いことではないが、働く上での目標がなく、人生に対する夢がないのは問題だと話す。一方、教会でも若者に夢を持たせることができにくくなっている現状があると語った。
この日開催された「ファシリテーター・トレーニングセミナー」は今回で8回目。これまでも、「飢餓とは何か?」「その原因は何か?」「何ができるのか?」を参加者と一緒に考えてきた。詳しくは、同機構のホームページで。