VIPプリズム主催の講演会が21日、カトリック聖イグナチオ教会(東京都千代田区)で開催された。「人生は出会いで決まる」をテーマに、国際弁護士の佐々木満男氏が、人生にとっての最高の出会いについて語った。
VIPプリズム会長の五十嵐弘志氏は、講師の佐々木氏を「おやじ」と呼ぶ。佐々木氏は、五十嵐さんの「永久身元引受人」だ。2人が初めて出会ったのは、拘置所の接見室。当時、3度目の逮捕で拘留中の身だった五十嵐さんから、「弁護士なのに、なぜイエス・キリストを信じることができたのか」という手紙を受け取ったことをきっかけに交流が始まった。
佐々木氏は初め、聖書の話をするためだけに会うつもりだったが、五十嵐さんは面会中泣きっぱなしで何も話せないまま、面会時間が終わってしまった。その日は、一旦帰ることになったが、その帰りに偶然会った当時のムラサキスポーツ会長から、五十嵐さんの身元引受人になってほしいと依頼され、2回目の面会時に身元引受人になることを伝えた。佐々木氏によれば、「このことを言わせたのは、私の中に住むイエス様だった」という。
その後、佐々木氏はもう一度同じような経験をする。刑期を終えた五十嵐さんは出所後、民間非営利団体「マザーハウス」を設立することになるが、その準備中に知り合った女性と結婚する。その結婚式で、佐々木氏は、死ぬまで面倒を見るという意味を込め、五十嵐さんの「永久」身元引受人になることを約束した。この時もまた、「自分の中に住むイエス様が言わせた」のだと佐々木氏は話す。
当時、大手の弁護士事務所に所属していた佐々木氏は、仕事とは関係のないことで拘置所に行くのはあまり気が進まなかった。しかし、五十嵐さんのあまりのしつこさが、佐々木氏の心を動かした。出会いがどう動くかは神のみぞ知ることだと言い、「自分はそれに従っただけ」と語る。
佐々木氏は、「自分は、洗礼を受けるまで20年かかった。その間大勢の人との出会いがあったから、イエス・キリストに出会うことができた。だから、自分も誰かがイエス・キリストに出会うための一人になりたい」と話す。そして、「人生には、友達、教師、配偶者、家族も含め、多くの出会いがある。しかし、最高の出会いはイエス・キリストとの出会い。それは、聖書を通してしか分からず、聖霊によって私たちの中に入ってくださるものだ」と続ける。
五十嵐さんは、3度目に逮捕されたとき、同じ拘置所にいた日系ブラジル人との出会いがきっかけで聖書を読むようになり、神の声を聞いたという。このことがなければ、今「おやじ」と呼ぶ佐々木氏との出会いもなかっただろう。イエス・キリストと出会えたことが2人を結び付けた。
五十嵐さんが設立した「マザーハウス」では、出所後の受刑者をケアする活動を行っている。この活動は、簡単なことではないと佐々木氏は言う。それでも五十嵐さんは、この活動が神から与えられたものだと確信し、ブルドーザーのような勢いで突き進んでいる。今では、五十嵐さんの活動に共感した大学生たちが、受刑者たちと文通を始めていることが紹介された。五十嵐さんの中に住んでいるイエス・キリストが、感動を周りに与えているのだと佐々木氏は言う。また自身も、これまでの境遇から逃げず、困難な活動を続ける五十嵐さんから力をもらっていると語る。
参加者からの「いじめなどで苦しんでいる人と、支援をしてくれる人とは、どうつながることができるのか」という質問に対し、佐々木氏は「人と人とのつながりで最も大切なことは、壁を取り払うこと」と答えた。「私たちは、自分を守るために人との間に一線を引いてしまう。それを取りはずし、まず出会ってみる、話をしてみる。そこで初めて、その人の個性を知り尊重できる」と言い、人間が作ってしまう壁を取り壊すことを勧めた。
五十嵐さんも、インドのカルカッタでのマザー・テレサの働きを顧みたとき、「まず人と関わること」が大切だと言う。「直接声を掛けること、実際に手を握ることこそが必要。そして、そこに自分が行くか、行かないかということをキリストの愛に照らし合わせてみる。クリスチャンといったとき、あの人を見てクリスチャンになりたいと思ってもらえるように、祈りと生きた愛を実践できるようになりたい」と話す。
佐々木氏は、全ての人にイエス・キリストと出会ってほしいと言う。「イエス・キリストにより、死の問題に至る全てのことが解決され、本質的には何の心配もなくなる。出会わないと損。人生で最も大切なことは、イエス・キリストと出会うことだ」と締めくくった。
NPO法人マザーハウスのホームページはこちら、問い合わせはメール([email protected])で。