日本基督教団新潟地区世界宣教委員会は10日、同教団新潟教会で、関西学院大学神学部教授で世界教会協議会(WCC)信仰職制委員会の元委員である神田健次氏を講師に、「世界のキリスト教会の新しい動向—WCC釜山総会に参加して—」と題する講演会を開催した。
この講演会は、昨年10月30日から11月8日まで、韓国・釜山で「いのちの神よ、私たちを正義と平和へと導いてください」を主題に開かれたWCC第10回総会についての報告を聴き、世界の教会につながる自らの宣教について考え、分かち合うひと時をもとうと開かれた。
同総会に参加した新潟県出身の神田氏は、講演会で映像を多く含むスライドを使いながら、「エキュメニカル」という用語の意味やエキュメニカル運動の歩み、また自身のWCCへの参与を紹介し、WCC第10回総会などを振り返った。その上で、釜山総会で提示された「教会—共通のヴィジョンを目指して」「いのちに向かって共に—変化する世界情勢における宣教と伝道のあり方」という2つの文書を紹介した。神田氏によると、これらの文書は現在日本語訳が進められているという。
1991年から2006年までWCC信仰職制委員を務めた神田氏には、『現代の聖餐論―エキュメニカル運動の軌跡から』(日本キリスト教団出版局、1997年)など多くの著書がある。また、最近では、日本キリスト教団出版局の季刊誌『礼拝と音楽』(160号)で、WCC第10回総会の礼拝の開会礼拝に関する記事を著している。
講演後の質疑応答の中で、神田氏は「アジアのキリスト教は非常に重要で、これからは世界からも注目されていく。日本はマイナー(少数)だが卑屈になってはいけない。たくさん世界に貢献できることがある」などと語った。
本紙からの質問「日本とその地域社会でのエキュメニカル運動で、具体的に何ができるのか、また何をしてほしいと考えるのか」には、「地域でもカトリックと一緒にクリスマスをしたり、新共同訳聖書を使ったりしている。神学教育もエキュメニカルであることが今日では当たり前になってきている」と答えた。また、「東日本大震災(後の被災者支援活動)でも、教派を超えて、他の宗教との協力がみられる。願わくばネットワークでつながっていくようになればいい。NCC(日本キリスト教協議会)はいまそういうネットワークの機能をしていないので」と述べた。
神田氏によると、今年2月に日本クリスチャンアカデミーの関西セミナーハウスで行なわれたプログラム「第10回WCC総会と日本の教会」の参加者たちが集まって、「エキュメニカル・ネットワーク」(代表:前島宗甫・関西学院大学名誉教授)が結成された。神田氏はこのプログラムでコーディネーター役を務めたが、「緩やかなネットワークで、NCCを立てて補っていくことがその目的だ」という。
同ネットワークは、8月6日にWCCのオラフ・フィクセ・トゥヴェイト総幹事を迎えて京都のカトリック河原町教会で行われる「平和の祈りの集い」でも賛同団体に加わっている。現在のところ同ネットワークにはウェブサイトはないが、神田氏がWCC中央委員の西原廉太氏とともにその事務局を担っているという。
講演会に参加した新潟地区のある女性は、「新潟ではカトリックなどの人たちと一緒に世界祈祷日をやっている。教団の中でも違う教派の人たちとどのように一致してやっていくか?他の教派との一致とその両方が重要ではないか」と語り、さまざまな教派の流れを汲む合同教会としての同教団内の事情を打ち明けた。
新潟地区世界宣教委員会の三村修委員長(同教団佐渡教会牧師)は、「このままでは、教会の外も中も、ものの言いにくい世界になってしまう。もっとにぎやかな世界をつくろう。そのためには、学習もしよう」と、今回の講演会を開催した意図を説明した。また、三村氏は「新潟地区世界宣教委員会が主催して、このような学習会を開くというのは、近年なかったこと」だと付け加えた。
トゥヴェイト総幹事の来日を前に三村氏が日本語訳した同総幹事の近著書である『Christian Solidarity in the Cross of Christ(キリストの十字架におけるキリスト者の連帯)』からの抜粋「預言と和解、癒しへの招き」は、新教出版社刊の月刊『福音と世界』(8月号)に掲載される予定。
また、佐渡教会では、佐渡におけるローカルなエキュメニカル運動の実践として、8月25日(月)〜29日(金)に同教会で2014年佐渡ピース・キャンプを行う予定で、現在参加者を募集中。紛争解決・平和構築ワークショップ、聖書研究、エクスポージャー(平和構築の視点で佐渡探検)、共同生活などで構成される。トレーナー兼ファシリテーターは、M・ローゼンバーグの非暴力コミュニケーションに取り組む小笠原春野氏(国際基督教大学教会員)。申し込み締め切りは8月11日(月)。申込書など詳しくはこちら。