教会の暦ではレント(受難節)にあるさなか、気候変動の影響について最新の報告書をまとめようと、科学者や政府代表者らが集まって25日に横浜で開幕した「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の総会。これに先立って、世界教会協議会(WCC)被造世界の保護・気候に関する正義に関する活動のコーディネーターであるグイレルモ・ケルバー博士は、「気候に関する正義へ改心を」と題する記事を、21日付の聖公会の英字紙「チャーチ・タイムス」に寄稿した。
ケルバー博士はその中で、IPCCが今週、地球に対する気候変動の影響や、未来に起こると予想されることに関する最新の報告書を発表すると述べたうえで、「レントのさなかにあるクリスチャンにとって、それは時宜を得たかたちで思い出させるものとしてやってくる。それはつまり、気候変動のために苦しんでいる世界中の兄弟姉妹たちのことを考えること、そして教会がどんな役割を果たせるのかということだ」と述べた。
「『私たちにとって、気候変動は生きるか死ぬかの問題だ』と、数年前に太平洋教会協議会(PCC)の総幹事は言った。太平洋諸国の社会は、海面上昇や淡水の塩類化によってずっと再定住を余儀なくされてきている。これはとりわけ島民がブーゲンビルへ移住させられたパプアニューギニアのカルテレット諸島や、丘の上に移住したフィジーの沿岸の村々の場合がそうである」と、ケルバー博士は記した。
ケルバー博士は、再定住がIPCCの新しい報告書でさらに分析される気候変動による影響の一つだという。昨年に出版されたその報告書の第1部では、気候変動が人間によって引き起こされているという科学者たちの確信が95%にまで増えたという。
ケルバー博士によると、最新報告書の初期の草案には、気候変動の影響を示す事例として、アフリカのマリ共和国に関する部分では、600万人に近い人々が気候や暮らし・人口の変化によって栄養不足を体験するかもしれないと記されており、その4分の3から100万人の間のいずれかの数が5歳以下の子どもたちだという。また、気候変動のために、サハラ以南のアフリカで2050年までに死亡率が増大する危険につながる深刻な子どもの発育障害が少なくとも31パーセント増えると予測されているという。
ケルバー博士はまた、「気候変動は地球規模の現象ではあるものの、それは全ての国々に同じ形で影響を及ぼしているわけではない。ある社会や国々は他よりもっと脆弱である。とりわけ低地の島々や、アフリカやアジアの乾燥地帯、そして特定の先住民社会が、特に危険にさらされている」と述べた。
さらに、「生態系の危機は神学に課題を投げかけ、被造世界について新たな理解を押し進めた。そこでは人間があまり主人として見られるべきではなく、他と同じ被造物として見られるべきであり、創造物語の第二の部分に示されているように、エデンの園を守るという特別な責任を負っている(創世記2章15節)」と述べた。
そしてケルバー博士は、「気候変動の神学は、神が超越的であるだけでなく、聖霊を通して被造世界の中に存在しておられるということも強調してきた。さらに、人間が引き起こすという気候変動の特徴からすれば、人間の行動はその傾向を転換するために重大であり、それはしたがって人間の責任である」と述べた。「このような倫理的視点から、気候に関する正義はますますエキュメニカルな運動の核心になりつつある」とケルバー博士は言う。「クリスチャンにとって、神は正義の神であり、孤児と寡婦、寄留者を気遣うことで正義ある行動をするようご自身の民に求めておられる(申命記10・18、イザヤ1・17)。現代においてこれらに相当するものが気候変動の被害者たちだ。それが正義の問題だというのは、今苦しんでいる人たちや将来最も苦しむことになる人たちが、その原因に対する助長の最も少ない人たちだからだ」
ケルバー博士はまた、「これは単に神学や政策提言、あるいは倫理だけの問題ではない。教会はそれを日々のクリスチャン生活の一部にしており、あるいはレントのように特定の季節の一部にしている。今はクリスチャンが祈り分かち合い断食することの意味を省察し再発見する時だ」と述べた。
ケルバー博士によると、聖公会環境ネットワークは、このレントに「二酸化炭素の断食」を提案しており、毎日の具体的な行動を提言しているという。また、教会や教会関連団体が協力して国際的な政策提言活動を行っている「エキュメニカル・アドボカシー・アライアンス」は「いのちのための断食」を呼びかけており、食品廃棄物と気候変動のつながりを例示する方法として、「毎日のゴミをゼロにするチャレンジ」に参加するよう人々に促しているという。
「レントは回心を、心と態度の変革を、そして思考の枠組みの変革を呼びかけるものだ」とケルバー博士。「2012年にドーハで行われた国連気候サミットに対するWCCの声明文が記したように、『私たちの社会の中にある消費の大きい部門における、終わりなき成長と飽くなき消費の増大を促す支配的な経済戦略の中にあって、思考の枠組みの変革は必須であるように思われる』」と言う。
同博士は最後に、「気候変動はさまざまな国々や人々にさまざまな形で影響を及ぼしているが、しかし私たちのキリスト教信仰は自らの行動に責任を負うよう私たちを招くものである。二酸化炭素の排出や水・食べ物そしてエネルギーの無駄遣いを助長している日々の行動である。このレントが、私たちがよりエコロジカルで正義による生き方へと改心するための機会とならんことを」と結んだ。