WCC総幹事のオラフ・フィクセ・トゥヴェイト博士は声明文で、5月の国際エキュメニカル平和会議(IEPC)についても再度紹介し、「IEPCではセツコ・サーロー氏の証言がビデオメッセージで流されました。彼女の生涯における原爆の被害を伝える勇気ある活動と反核への思いは私達に公正な平和の心に対する希望をもたらしました。広島・長崎原爆による犠牲者の思いに応える最善の策は彼女のような原爆による被害を直接経験された生存者がおられる間に、少しでも核兵器を削減していくことにあると考えています」と述べた。
66年前に広島に投下された原爆の被害を直接経験した生存者であるセツコ・サーロー氏は「いかなる人であってもこのような非人道的、不法、不徳で残酷な原爆による被害を二度と経験するべきではない。私達生存者は私達個人の悲劇を乗り越え、生存した意味を伝えて行く必要がある」とメッセージで訴えていた。
世界核軍縮の問題について、「核兵器が存在する限り、毎年世界のどこかで同じような悲劇が生じる原因が生じます。昨年12月には米国とロシアが両国に存在する核兵器を削減するための新核軍縮条約(新START)を批准しました。昨年、諸教会を含む市民社会の圧力とともに、これまでの歴史で最多の各国政府における全ての核兵器を撤廃していくための同様の条約への支持が得られました。一方ジュネーブ軍縮会議(CD)では9カ国の核保有国と、核保有を検討している数カ国によって全体的な軍縮への過程が阻害されている状況にあります。市民団体が今年6月に発表した調査結果によると、財政赤字、金融危機にもかかわらず、核保有国9カ国では、今後10年間にわたって1兆ドルもの核兵器のための軍事予算を計上しています。今年は北大西洋条約機構(NATO)に加盟する各国諸教会を代表して、WCC、欧州教会会議(CEC)、全米キリスト教会協議会(NCCC)、カナダ教会協議会(CCC)はNATO加盟各国に対し、欧州に配備されている米軍の核兵器の撤去を行うように促しています」と述べた。
また東日本大震災について、「3月に生じた福島原発事故では、放射能の被害が生じ、多くの人命が奪われました。日本の諸教会は生存者を救出し、また政府の原子力政策について注視しています」と述べた。広島原爆から66年目となる6日午前、菅直人首相も原爆死没者慰霊式・平和記念式であいさつを行い、「脱原発」の方針を明らかにした。原爆の犠牲者を追悼する式典で首相がエネルギー方針に触れるのは異例のことである。
最後に現代の環境が直面する脅威についてトゥヴェイト総幹事は、「5月のWCC平和式典では世界正教会信徒の精神的指導者であるコンスタンティノポリ総主教からメッセージが届けられました。総主教は、諸教会が世界のための神の愛を反映していくように呼びかけ、『現代は少なくともこれまであり得なかった2つの面での環境の激変の中にあります。第一に、いまだかつてひとつの人類による組織が同時に多数の人々の人命を奪えるような時代はありませんでした。第二に、人類が地球環境をこれほどひどく破壊できる時代もまたいまだかつてありませんでした。私たちはこのような急激に変化した新たな時代に直面しています。二つの面において私たちが平和に向けた急進的なコミットメントを要求されている状況にあるといえるでしょう』と述べられました。総主教の言葉は世界エキュメニカル共同体に対し『教会として私達がこの二つの恐ろしい脅威を受け入れることはできない。人類の家族の一員としてこのような二つの大きな脅威に対する答えが得られないままにしておくわけにはいられない』という思いを新たにしました」と述べた。