東日本大震災から早5カ月が経過しようとしている現在において、被災地の支援活動長期化に伴う支援者・被災者双方の「心のケア」の必要性が高まっている。
被災地では、周りの多くの人々が亡くなったにもかかわらず、自分だけが生き残ってしまったという「サバイバーズ・ギルト」の感情、つまり「なぜ私だけが生き残ってしまったのか?どうしてあの時、助けてあげられなかったのか?私が死ねばよかったのに」と生き残った人たちが震災直後のショック状態が落ち着いてきた頃に表に出てくる感情が生じている。被災地のボランティアスタッフも物理的支援のみならず、震災後時間が経つにつれこのような被災者の心のケアに焦点を当てた奉仕がますます重要になってきている。
被災地ではクリスチャンボランティアおよび民間ボランティアがゴスペル・音楽コンサートを頻繁に開催し、被災者の心のケアを行っているが、7月28日東京淀橋教会で精神分析医のペーター・フィーデルベルガー博士を招いての音楽療法についての講演会が開催され、このような音楽を通じた心のケアの効果について説明がなされた。同氏は90年代後半にコソボ戦争の犠牲者のために、ユネスコの救命団体セラピストとして精神的外傷を持つ子供のための心理療法を始めた一人として知られている。
同氏によると、音楽療法は、ほとんどの場合、信じられないような悲惨な経験をし、自分一人の力だけでは進むべき道も分からなくなり、計画も何も立てられなくなるほど深い絶望感に陥った人を対象に行われるものであるという。そのような場合、どのような言葉も役に立たず、唯一の救いになれるのが音楽であるという。これは医学的見地から見ると、「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」といわれる状態である。
心理的ショックにより、言葉ではその人にほとんどなにも伝えることのできないところでは、橋渡し役を果たすのは、まず音楽であるという。音楽療法がその症状や神経的な障害や疾病を分析するのではなく、その状態から解放し楽にすることを意味する。音楽療法は、その人の可能性を花開かせること、成長させること、それに創造性を目指すものであるという。音楽療法はとりわけ子供もしくは若年層の患者に対して、コミュニケーションをしながら感情的な発言をしようという心の準備を明確に促進してくれるという。
クラッシュ・ジャパンでは被災者の心のケアマニュアルを作成し、クリスチャンボランティアの目的を「できる限りの霊的な助けを行い、被災者の心の傷を最小限にとどめることです。皆様が自分の役割を果たすなら、神様は必ずそれに応えてくださいます。例え自分の力の及ばない事態に遭遇したとしても、神様にはできないことはありません。神様が必ずあなたを用いてくださいます」と説明し、神様に用いられる自分としてのアイデンティティをもって被災地の心のケア支援に赴いている。また被災者への奉仕を終えたら、被災者を励ます心のこもった言葉や聖書の御言葉を書いたカード(教会の連絡先やWebのリンク等の記載のあるもの)を渡すことを勧めている。
クラッシュのマニュアルによると被災者の心理状態は一般に1.英雄期(災害直後)、2.ハネムーン期(1週間~6カ月間)、3.幻滅期(2カ月~1,2年間)4.再建期(数年間)の4段階を経るという。
第1段階では自分や家族・近隣の人々の命や財産を守るために、危険を顧みずに勇気ある行動を取る時期、第2段階は劇的な災害を共にくぐりぬけてきたことで、被災者同士の間に強い連帯感が生じ、外からの援助やサポートに希望を託しながら、皆で瓦礫や残骸の片づけなど、互いに助け合うようになる時期であるという。この時期は被災地全体を暖かいムードが覆うが、これは世間の注目が減少すると、次第に否定的な感情へと移り変わる可能性があるという。第3段階では、被災者の忍耐が限界に達し、援助の遅れや行政の失策への不満が噴出する時期で、やり場のない怒りに駆られたり、喧嘩などのトラブルも起こりやすい時期であるという。被災者の間で様々な依存症や心理的病状が現れ、自殺の危険性も高い時期であるという。個人個人の生活の再建や自分の問題の解決に追われるため、第2段階で味わった地域の連帯感や共感が失われて行く時期であるという。最後の第4段階では被災地の「日常」が戻るにつれ、被災者も生活を立て直すために勇気を持つ段階。地域の再建に積極的に参加することで、自信も回復してくる。ただし、心の支えを失ったり、復興から取り残された人にとっては、ストレスの多い生活が続くという。
クリスチャン・ボランティアならではの「心のケア」マニュアルに沿った支援、神様の働き手としての祈りに基づいた支援によって、心の支えを失った被災者がイエス・キリストの御言葉を心のよりどころとしたキリストにあって新たな再建期を迎えることが願われている。クラッシュ・ジャパンとして現在被災地で支援活動を行っているシグリスト・ウルス氏は、支援者の側の心のケアとして「日々のボランティアをする前に必ず祈ること、無理をせず十分な休息を取ること」を心がけているという。また、直接被災地へのボランティアに参加できない場合でも、フェイスブックなどソーシャル・ネットワークツールを通じたボランティアスタッフへの暖かい励ましのメッセージを継続的に受け取ること、その他被災地での活動への祈りや励ましが継続的に行われ続けることも大きな力になっているという。
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