一九八七年五月、統一協会による霊感商法被害の根絶と被害者救済を目的に全国約三百名の弁護士が賛同して結成された全国霊感商法対策弁護士連絡会(略称「全国弁連」)は、設立以来、年間平均約千件の問い合わせに対応してきた。しかし、全国弁連に寄せられる被害も全体からすれば氷山の一角に過ぎないという。
全国弁連の渡辺博弁護士によると、一時は合同結婚式などが社会現象として取り上げられたにもかかわらず、統一協会による被害とその手口は変わっていないという。
統一協会の手口は、世界平和女性連合や世界平和統一家庭連合、天地正教、韓日人協会、野の花会、カトレア会など多くのダミー団体をかたり、統一協会や宗教団体とも名乗らずに勧誘する。その後、先祖の因縁や将来の不幸、地獄で永遠に苦しむなどの不安をあおり、多額の献金をさせるといったものだ。
また、大学でのサークル活動やボランティア活動、コリアンアート美術展、韓国の子供楽団を名乗るリトルエンジェルスによる公演、FF伝道と呼ばれる友人や家族を使った伝道を通じて勧誘してくる。
実際に被害者が被害に気づいていないケースも多く、自覚するまで時間がかかることもある。そのため、初期の場合を除いては、全国弁連に持ち込まれる相談の多くが家族、恋人、友人等からのものだという。期間の長短にかかわらず、一度被害に遭うと、自覚しないうちに多額の現金を騙し取られるとのこと。また、信者たちは地上天国実現のためという自分たちの行為が正しいと思い込むようにマインドコントロールされており、罪意識はないという。信者たちは天法が地法に勝るという教えを徹底的に教え込まれており、彼らにとって法律は規範として機能しないという。人の財産を把握して全てを奪うことで、その人が永遠の命へと導かれるという教えから、うそを言っても罪悪感を覚えないという。
渡辺弁護士は、被害が後を絶たない原因として、欧米でこれほどの活動を行えば国が対策に乗り出して規制するが、日本は公共機関が規制することがなく、また、特に公教育の場において注意が促されていない点が問題であると指摘した。公共の場で被害対策を呼びかけていくのと同時に、女性が被害に遭いやすい現状を踏まえ、看護学校やフライトアテンダントの職場など、女性が多い場でのアナウンスをしてほしいと語った。また、日本の教育の問題点として、第二次世界大戦をはじめとする歴史教育不足があるとし、現に統一協会がこの点を指摘しながら罪悪感をあおる手法を用いることから、公教育の重要性を訴えた。
また、もう一つの点として、報道機関も有名人の合同結婚式などで統一協会を取り上げる場合はあったが、それらが一過性のもので継続報道がない点も問題であるとした。多額の被害が報告されているにもかかわらず、その実態が報道されておらず、多数のダミー団体の存在とその手口が知られているにもかからず、その認識が世間に広まっていないことが被害に遭う原因になっているという。
また、統一協会内で日本は「エバ国家」として世界の統一協会組織を資金的、人的に支える義務があると言われており、統一協会の活動資金の大部分が日本から送られているにもかかわらず、その現状が世界的に広く知られていないことも問題点として指摘した。そのため、全国弁連のホームページ上では英文ページを作成し、日本の被害実態を世界に向けて公開している。
渡辺弁護士はこれまでの全国弁連の活動の成果として、活動が違法であるという判決や被害訴訟での実績、被害者の復帰ルートの準備等をあげ、被害の拡大を防ぐことは出来ているのではと語った。
全国弁連は、これまでキリスト教会とも日基教団の牧師をカウンセリングや被害後のケアに紹介し、教団からも裁判の弁護要請を受けるなどの交流があり、最近では聖公会やカトリックとも交流があるという。
統一協会の被害の実態を報道している日本弁連のホームページはhttp://www1k.mesh.ne.jp/reikan/index.htm.
被害者の相談窓口はTEL 03-3358-6179 FAX 03-3353-4679。
統一協会が運営するダミー団体として知られている団体・企業は次のとおり。
世界基督教統一神霊協会(統一協会)、国際家庭(International Family Japan)、全国大学連合原理研究会(J-CARP)、真の家庭運動推進協議会(APTF)、世界平和女性連合(WFWP)、世界平和教授アカデミー(PWPA)、Pure Love Alliance Japan、天宙清平修練苑、千葉中央修練所、世界日報社、ワシントンタイムズ、UPI通信社、中和新聞、世一旅行社、城南一和天馬蹴球団、光言社、リトル・エンジェルス、一心病院、しんぜん会 等。