「わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。」(ヨハネ一三・三四)を標語に、アジアを中心に保健医療が不足している地域への協力を行っている日本キリスト教海外医療協力会(JOCS)は、今年も二人の保険医療従事者(ワーカー)を派遣する。
一九六〇年に設立されたJOCSは、これまでインドネシア、カンボジア、ネパール、バングラディッシュなど、アジア諸国を中心に五十人以上のワーカーを派遣してきた。〇四年四月現在、バングラディッシュ、カンボジア、アフリカのウガンダにそれぞれ一人ずつ派遣している。
JOCSは、日本のアジア諸国への侵略に対する反省と償いのために、設立当初からアジアを中心に活動している。「共に生きる」をモットーとして、安易に資金や物資を送ることをせず、現地人の自発的な努力を側面から草の根的に支えることに重点をおいて活動してきた。
そのため、技術提供のみならず、現地の人たちと共に働き、現地の人たちが自立して自国の状況を改善していけるように支援してきた。これには現地人を対象に奨学金を用意し、現在は公募制で年に二回、出願を審査。高学歴の人ではなく、医療関連のスキルアップを願い、支援後の結果も確かめられる一般的な人を対象に支給している。海外担当主事の川口さんによると、現在は看護士への援助が最も多いという。
ワーカーの派遣は現地からの要請で行われ、主にキリスト教関連病院や看護学校の教務主任、オーディオロジスト、理学療法士、作業療法士、医師、看護士の派遣要請がある。川口さんによると、最近は理学療法士や作業療法士の需要が高いという。
カンボジアは現地の事情もあり、NGOとして政府に登録、現地人スタッフも雇いながら独自のプロジェクトで活動している。医療手段を宣教の手段とはしない方針のため、受け入れ側の宗教は問わないが、ワーカーはキリスト教精神に基づいていくため、クリスチャンで信仰生活をしっかりと歩んでいる人が対象だという。
海外派遣ワーカーは一期三年の任期(シニアワーカーの場合は一年か二年を選択)で募集され、二期目以降は二年か三年が選択可能。過去には長期でする人も多かったというが、現在は他のNGOが増えたことで選択肢が増え、一、二期だけで辞める人が多いという。帰国後は三か月の報告期間があり、二期目に三年間を選択する人には最大一年、二年間の人には最大八か月間の準備期間が与えられる。二期目以降を続けない人についても、就職準備期間として報告会後三か月は給与が支給される。また、一、二週間から最長一年の短期ワーカーも募集しており、こちらはクリスチャンでなくとも応募可能。
今年七月からカンボジアNGOの現地代表として派遣される諏訪恵子さんは、これまでも別のNGO団体で約十年間カンボジアで活動してきた。JOCSともその当時から交流していたという。諏訪さんは、「カンボジアでの経験はあるが、それだけの視点で見るのではなく、もっと視野を広げてカンボジアを見て、さらに自分を成長させていきたい」と話した。
九月からバングラディッシュに派遣される伊藤みりえさんは整形外科医。伊藤さんはこれまで海外で活動したことがなく、バングラディッシュではハンセン病患者の治療にあたるという。「前からこのような活動がしたいと思っていた」という伊藤さんは、「今までしたこととは違うので、不安は多くあるが、勉強しながら活動していきたい」と抱負を語った。
ワーカー派遣以外にもJOCSでは、海外保健医療に関心のある人を主な対象として、海外医療セミナーを年一回、現地へのスタディーツアーを年二回開催している。また、年三、四回海外医療の勉強会も開催しており、次回は東京事務局で七月十日、発展途上国の栄養問題の現状と課題を主題に行われる。そのほか、修学旅行の受け入れや元ワーカーなどの講師の派遣、ワークキャンプや海外長期研修なども行っている。
最近になって、協力関係にある海外の国からJOCSの視察に訪れる人もあるという。現地の様子をより詳細に知ることができ、現地人にとっても日本の民間人が活動の支援側にいることを知ることができるので、今後も交流を活発にしていきたい、と川口さんは話した。
今年はJOCSの活動の一環として続けられてきた使用済み切手運動が四十周年を迎える。これまで、200万件、総計100億枚以上の切手を集めたという。毎年年間予算の約一割に当たる二千万円の収入がある。作業は全てボランティアによって行われ、十キロ缶に分け、一缶一万二千円で切手収集家に販売する。全国各地での切手祭りにも出展しており、現在は切手だけではなくプリペイドカード(テレホンカード、電車のカード等)の回収も行っている。
今年は四十周年記念として、東京と大阪の駅にポスターをはる。四月以降は小中高校で講演会を行う。十一月二十一日は使用済み切手運動四十周年記念集会を開催する。また、毎年八月末に行われるJOCSのつどい(今年は八月二十八日)でも、今年は切手運動四十周年をメインにコンサート、パネルディスカッション、コレクターによるバザーなどが行われる。川口さんは、切手は依然不足しており、更なる協力があればと話した。
JOCS東京事務所スタッフの濱野さんは、今後の課題として、会員の減少傾向や国内諸教会とのつながりをあげた。JOCSの事務所は東京と大阪にあり、仙台、足利、町田、岡山、播州、神戸、芦屋、高知、京都と全国九か所ではボランティアによる地区JOCSが独自に支援活動している。全国で約六千五百人いる会員の半数以上はノンクリスチャンだという。夏季とクリスマス時には特別募金も実施。スタッフは現在非常勤も合わせ東京で八人、関西三人。活動はホームページhttp://www.jocs.or.jpでも公開されている。