ポルトガルのソクラテス首相は11日、同日行われた人工妊娠中絶の合法化を問う国民投票で賛成票が60%近くを占めたことを受け、与党社会党が過半数を占める議会において、人口妊娠中絶を合法化するための法案を成立させる意向を表明した。
AP通信などによると、国民投票の投票率が規定の5割を下回ったため国民投票は不成立となり、議会が人工中絶を合法化する義務はなくなっていた。
しかし非合法で行われている人工中絶の実態を懸念し、早くから賛成投票を促してきたソクラテス首相は、国民投票の結果は「(合法化に向け)政治的、法的な正当性をより強めた」と強調し、人工中絶の合法化を断行する方針。
これに対して反対派は、「低い得票率は中絶が大きな問題ではないということを示した」として、ソクラテス首相の意向に反発。保守的なカトリック教会も、「(人工中絶は)生命の神聖さを冒涜する行為」として反発姿勢を強めている。
カトリック信徒が全人口の90パーセントを占め、保守勢力の影響力が強いポルトガルでは、強姦、胎児の異常、母体の生命への危険があるケースのみ、妊娠12週までの人工妊娠中絶が可能とされている。違反行為は最長3年の禁固刑を受けなければならない。この基準は欧州連合(EU)加盟国内で最も厳しいものとなっている。