【米サウスカロライナ州コロンビア(AP通信)】米サウスカロライナ州立法者らが州議会議事堂で明示された最新の進化論教育政策書に対する議論の準備をするために、米哲学者らが15日、生物の授業で進化論を教えることについての議論を細かく分析した。
米下院委員会は16日進化論教育に関してどのように進化論にたいして「批判的分析」が可能な教科書、ソフトウェア、そのほか進化論教育用教材を作成するかについての修正事項について検討した。
生徒たちに進化論の問題点について学んでほしいと考えている米保守派立法者にとって、今回の修正事項に関する検討は進化論を批判する最後の策である。
州議会議員のボブ・ウォーカー氏は、教育監視委員会の1人として、州教育委員会で用いる進化論カリキュラムの意味づけを修正しようと努力しており、現状の生物の進化論に関する教科書の文章は「適切ではないと感じる」と述べている。
地球上に存在する有機体が、どのように今日あるようになったかを学ぶのに進化論を理解するのは不可欠であると主張する生物学者らは、「ウォーカー氏らが『批判的分析』として提案していることは、進化論の教科書に知的創造論を挿入しようとする裏口を作ろうとしている企みである」と見なしているという。知的創造論とは地球生態系はあまりに複雑なために、この地球生態系を創造した創造主、全地のデザイナー、つまり『神』の存在を抜きにしては地球生態系の説明は成り立たないとする理論である。
進化論に関する議論は16日の会議の後も、少なくとも二つの集会で議論が継続される模様である。サウスカロライナ州上院委員会では、すべての教材には「批判的思考」ができる余地をあたえるべきであることが呼びかけられた。
15日月曜日に、哲学者、教授らがサウスカロライナ大学(USC)に集まり、進化論について議論し、どのように進化論がサウスカロライナ州の学校で教育されるべきか話し合った。
進化論を教育すること自体は、それなりのメリットはあるのではあるが、進化論が絶対的に正しいと教えることに関しては、大学関係者側も対応に狼狽せざるを得ない状況であるという。
USC英文学教授で文学と科学を専門とするローラ・ウォールズ氏はある学生が進化論を教えられることで自分の人生における「宗教的な危機」を迎える原因になっていると相談されたことがあることを明かした。この生徒の家族や、所属教会団体らは、創造論を教えているのに、学校では進化論を教える。それ故に、彼自身としてはどちらを信じればよいのかわからない状態に陥っているのだという。
ウォールズ氏は、「私の中の一部では、これらすべての問題を明らかにしないといけない、と叫んでいますが、そのかわりに私はこの学生に対し、あなたの宗教観と生態系に関する科学的価値観をはっきりと分別しなさいと言いました。しかし本当にこのような問題を大学側としてどのように対応するべきでしょうか?疑問に思います」と述べた。
フロリダ州立大学哲学者のマイケル・ルーズ氏はこの問題は非常に複雑であるとし、「進化論の是非は化石記録によって証明できるものではなく、これは倫理性の問題になっていると思います」と述べた。
家庭教育および公共教育委員会議長を務めているロナルド・タウンセンド議員は、教科書修正法案が認められることを期待し、「教科書の説明は十分慎重に考慮される必要があります」と述べた。
ウォーカー氏の所属委員会では、教科書を修正する方法の一案として、教科書に「教科書はあらゆる学問領域において批判的分析を与える余地が残されておくべきものである」という注釈を記入しておくことが考えられると述べた。
ウォーカー氏はこのように記入することで両者が和解する教科書になるだろうと考えているという。
日曜学校で30年間聖書講義を行っているケン・クラーク州議員はこの提案に反対し、「私は聖書は教会の日曜学校や家庭でのみ教えられるべきものだと信じます」と述べているという。
キリスト教大国米国において進化論、知的創造論に関する議論はまだまだ長引きそうである。