【ワシントンD.C.(米クリスチャンポスト)】「自由な社会とは平和な社会のことです」-ブッシュ大統領はメキシコ大統領ヴィンセント・フォックス氏およびカナダ首相スティーブン・ハーパー氏と会談するため、メキシコカンクンへ向かう前にフリーダムハウスを訪問している最中、このように発言した。
ホワイトハウスによると、29日ブッシュ大統領は、「政府が自身の国民に対して責任を負うとき、人々が自由に発言して集会を開くとき、少数派が保護されるときに正義が広まります。それが平和へとつながるのです」と述べたという。
設立されてから60年が経過するワシントンD.C.を拠点とするフリーダムハウスは「世界中の抑圧された社会の鮮明な声」を聞き入れ、活発にラテンアメリカの独裁国家や南アフリカのアパルトヘイト、ソビエト共産主義や中央・東ヨーロッパの圧制、スーダン、イラン、サウジアラビアなど宗教をベースとした全体主義体制に反対運動を行ってきた政治運動組織である。
ブッシュ氏は、「私はフリーダムハウスの人々の働きにとても感謝しています。60年以上もの間、この組織は世界の自由と解放のために休むことなく働いてきました。フリーダムハウスの働きによって平和を継続させる唯一の方法は、自由と解放を世界中に拡張させることであるということがよくわかります」と述べた。
29日のブッシュ大統領の演説は、今月3度目の米国政府のイラクへのかかわりの支持を獲得し、戦争で疲弊したイラクに対する米国政府の関与はただ単に反乱勢力を拡大させるだけだと批判する人々に立ち向かうための演説であった。
ブッシュ氏は、「我々は戦争に直面していますが、また今は大いなる希望を抱えているときでもあります。今日の世界の一部は我々の努力によって、数年前には想像すらも出来なかった場所で自由と解放が根ざすようになりました」と述べた。
ブッシュ氏は1980年代初めには世界の民主主義国家はたったの45カ国しか存在しなかった。しかし今日では、フリーダムハウスの報告によると122カ国もの民主主義国家が誕生しており、今までにないほど多くの人々が自由な社会で暮らすことが出来るようになったことに触れ、「自由の発展は我々の時代の物語です。我々は今、目の前でこの自由の発展の物語の新たな章が書かれようとしているのを目撃しているのです。2005年以来、我々は著しい民主主義国家への変遷を世界各地で目撃してきました」と述べた。
民主主義国家への変遷の例として、ブッシュ氏はアフガニスタン国民が初めて民主主義的な国会によって選挙を行い、リベリア国民は何十年にもわたる暴動を克服し、アフリカ史上初の女性大統領がリベリアで選出されたことを挙げた。
またブッシュ氏は、「イラクの勇敢な人々が伝統ある政府、民主主義憲法、そして、新憲法下の新たな政府を選択するために、選挙に一度ならず二度、三度と足を運びました。これらそれぞれの国家が克服するため、忍耐、そして国際共同体の支援が必要な膨大な課題に直面しています。フリーダムハウスは30年前から世界の自由と解放について調査を始めて以来、2005年を世界の自由と解放のために最も多くのことをなした年であると宣言しました。カブールからバグダッド、ベイルートさらにその彼方まで、自由の波が伝播しています。そしてこの自由の波の伝播のために我々は休んでいる暇はありません。我々は自由と解放が世界中すべての人々、全ての国々に行き渡ることを確証するまで、決して自由と解放の伝播のための活動を休むわけにはいかないのです」と述べた。
米大統領は世界大戦の後に急激な民主主義の進展があったことと、今日の民主主義進展の事情は異なっていることにも触れ、「自由と解放は、平和な時代だけでなく、たとえ世界的な残虐行為と権力欲が集めうる限りの憎むべき暴力を結集させ、自由の進展と格闘しているような戦争の最中であっても進展しています」と述べた。
イラクにおいて現在蔓延している分断と政治的不安定についてブッシュ氏は、「我々が今日目撃している多くの敵意や暴力はサダムフセインの遺産です。彼は自分の権力を保つために宗派間の争いを増幅させた暴君です。 多くの民族、宗教、宗派間、地域、部族間の分断があるイラク国家においてサダムフセインは、彼に反抗する勢力が彼の政権を覆すことのないようにイラク国民を故意に分断することで支配力を保持しようとする戦略を企てたのです。イラク共同体を抑圧し、イラク国民を分断させ、フセインは彼だけを唯一のイラク国家を統一することのできる権威とする道を模索したのです。サダムフセインの抑圧と分断の政治運動のせいで、どのイラク政治組織も反抗することができなくなっていました」と説明した。
米大統領はサダム政権がイラク国家に行った残虐行為について誇張表現するのは困難であることも触れ、「イラクは物理的にも精神的にも30年にも亘るサダム政権の圧制によって痛めつけられてきました。このような長期にわたって受けた傷を癒すには時間が必要になるでしょう」と述べた。
ブッシュ氏はイラクにおける自由と解放のためには、まだまだ多くの挑戦が待ち構えているが、サダムフセインを権力の座から取り除いたことは「イラク国民が安定した自由と民主主義国家を再建するために必要不可欠な第一歩でした」と述べた。
ブッシュ氏は、「イラク指導者らは重要な真実、つまり、30年にも亘る暴君によるイラク国民の分断を克服する唯一の実践的な方法は民主主義を通してであるということに気づき始めています。ですから、イラク国民は以前の分断を克服し、全ての国民の権利を保護する自由な社会を建設し、たった一年の民主主義政治の経験によって今後の民主主義国家の進展に取り組んでいるのです。今日我々が米国で当たり前に思っている施設や伝統、政治組織や数世紀にわたる権力から平和への変遷が、今イラクで起ころうとしているのです。我々はたとえもしイラクが過ちを犯したりイラク国民を統合する政府構築の努力の過程において逆戻りするようなことがあっても、それにいちいち驚かされるべきではありません。我々は今イラクで自由と解放の進展の兆候を目撃し始めたばかりなのですから」と述べたという。