今年1月31日付で世界福音同盟(WEA)総主事を辞任したゲイリー・エドモンズ氏(55、Churches Together現総主事)がドイツの福音宣教同盟(Association of Evangelical Missions)の年次総会に主講師として出席した。同氏は壇上で「伝道は、魂の救済だけでなく、肉体の必要も考慮するべき」などと述べ、教会は政治、文化、経済、メディアでも影響力を持つことが大切と語った。ドイツに拠点を置くキリスト教誌IDEAが5日報じた。
AEMの年報によれば、ドイツの国内伝道は教育、医療、社会事業に重心を移し始めている。隠退牧師や任期を終えた宣教師の多くがこれらの分野に関心を寄せて発言しているためで、国内福音派の41.5%(03年AEM調べ)が社会事業に取り組んでいる。これを裏付ける形で、神学研究と教会開拓の働きが確実に減少していることを示す資料(同)もある。
AEMのデトレフ・ブロワ代表は、ドイツのキリスト教界の傾向を「福音派と超教派との間にある歴史的分断が解決される糸口となれば」と評価する。
エドモンズ氏の今回の発言は、WEA総主事を任期満了まで1年を残して突然辞任した決断の直接的動機とも関係がありそうだ。同氏は今年1月17日に辞任を発表、2月1日をもってその席を後にし、同日、世界宣教戦略に取り組むキリスト教諸派による連絡機関、Churches Togetherの代表に着任した。同氏は現在、エイズ問題と戦うアフリカの教会を、米教会が支援するためのネットワークの構築に取り組んでいる。
3週間の総主事不在を経て、WEAは2月24日、カナダ福音連盟(Evangelical Fellowship of Canada)のジェフ・タニクリフ氏を暫定国際コーディネーター(無期限)に任命した。また、この人事にあわせてWEA国際本部は、EFC本部があるカナダ・トロントに移された。
1月の時点で辞任の具体的理由について一切触れなかったエドモンズ氏だったが、その後、米キリスト教紙クリスチャンポストによるインタビューで「財政面の不安定さ、WEAの(旗印となる)唱道の弱さが辞任の主な動機」と、その心中を明かした。
同氏は「WEAと各国の加盟機関は、安定した資金源を獲得出来ていない。また、WEAの戦略的計画の立て方に問題がある。WEAは今後、同盟の発言、唱道、意思決定において、相当量の努力が必要だろう」と語った。指摘したこれらの点は、同氏が総主事に就任する以前からWEA内に存在し、未解決のままだった、と告白した。
また同氏は、WEAやNAE(米福音同盟)など、多くの教会が加盟する連絡機関で、加盟教会が所属機関よりも自教会の維持を優先する傾向があると述べ、連絡機関や平和活動を行う団体の多くは経済的な問題と常に格闘していると指摘した。同氏は「WEA会員は、多様な地域から各界で活発に活動する指導者たちに歩み寄り、彼らと対話し、関係を築いていくことが必要」と付け足した。
エドモンズ氏は、同紙を通じてWEA会員に「今こそ団結して、今日の世界が真に求めているものを見極める必要がある。福音派教会は、多様な教会や人々と交流して、教会や社会の諸問題に対する福音的見解の下に一致することが可能なはず」と語った。