『どんなことにもくよくよするな!』(イーグレープ出版)の著者、佐々木満男弁護士のコラムを連載します。ラジオ大阪で現在放送中の人気番組「ささきみつおのドント・ウォリー!」(放送時間:毎週日曜日朝9:30〜、インターネットhttp://vip-hour.jp/で24時間無料配信中)でこれまでに放送された内容を振り返ります。「ミスター・ドント・ウォリー」こと佐々木弁護士が、ユニークな視点から人生のさまざまな問題解決のヒントを語ります。今日はその第14回目です。
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「思い通りいかなくて当たり前」
思い通りいかないことって、本当に多いですよね。子どもの運動会を楽しみに準備したら、当日は朝から大雨で流れてしまった。どうしてもあの学校に入りたいと一生懸命がんばって勉強したが、入試で不合格で、行きたくもない学校へ入学しなければならなくなった。まじめに働いて良い業績を上げてきたのに、上司にうまく取り入った同期の仲間が先に出世してしまった。「この人は自分の理想の人だ」と思って結婚したら、性格が合わなくて毎日けんかばかり。小さいことから、大きいことまで、思い通りいかないことだらけじゃないですか。
でも、自分の思い通りいかないからといって、毎日毎日、不平不満をくり返していたらよくないですよ。不平不満がマイナスのエネルギーになって、人を攻めたり、社会を非難したり、ついには自分自身を否定するようになってしまい、トラブルがどんどん増えてきます。
本来、私たちの生きる生命力は、物事を破壊するためのマイナスのエネルギーではなく、物事を建設するためのプラスのエネルギーとして用いられるものなんです。私たちの生命力をマイナスではなくプラスに用いるにはどうしたらいいでしょうか。マイナスの方向からプラスの方向へ転換するにはどうしたらいいのでしょか。
1つの方法は、「自分の思い通りいかなくて当たり前なんだ」と割り切ることですね。そうすると、「チクショーとか、バカヤロー!」というマイナスのエネルギーが湧いてきませんよね。よく考えてみると、「自分の思い」というのは「自分勝手な思い」の場合が多いですよね。さまざまな人たちと一緒に生きていくのが人生です。それぞれの人の生い立ち、教育、性格、考え方は似ているようですが、本当は全部違うのです。自分の思い通りいくということは、他の人たちがすべて自分と同じ思いで生きるべきだということですよ。それは、傲慢な考えですよね。いろいろな違った考え方を持っている人たちの中で、自分の生命力をどうプラスの方向に用いていくかが大切なことです。
また、状況や環境も、自分ひとりで造り出したものではありません。いろいろな要素や条件が複雑にからみ合ってできているものです。自分の力では、当面どうしようもない天候や社会状況にただ不平不満をぶつけたところで、仕方がないじゃないですか。今の天候、今の社会状況の中で、自分の生命力をどうプラスの方向へ用いていくかが大切なことです。
ある牧師に3人の男の子がいました。子どもたちが立派な社会人になるようにと、牧師夫妻は一生懸命教育してきました。牧師の生活は貧しかったので、子どもたちは欲しいものも買ってもらえなかったのでしょう。あれをしてはいかん、これをやってはいかん、という厳しいばかりの教育に辟易としていたのかも知れません。
思春期が近づくにつれ、子どもたちが次々に非行に走るようになりました。万引き常習犯で警察につかまったり、無免許で運転したオートバイで事故を起こして相手に大損害を与えたり、遊び仲間をなぐって大きな傷害事件を起こし少年院に入れられたり…。
牧師は自分の息子たちのしでかした不祥事のため、あちこちに謝りにいかねばならず、莫大な損害賠償を支払わなければならないはめに陥りました。やむを得ず、彼は商売をすることにして会社を作りました。日曜は牧師、月曜から土曜まではビジネスマンの生活をしたのです。ところが、一生懸命に商売をしているうちに、彼に隠れた商才があったのか意外にうまくいって、莫大な損害をすべて賠償することができました。当然、自分たちの生活も豊かになりました。ピンチをチャンスに切り換えたんですね。
その後、時間はかかりましたが、何年もたった今では、三人の子どもたち全員が、まともな職につき、ちゃんと結婚して子育てに励んでいます。この牧師は自分の体験から、「どんなことになっても大丈夫!」という本を書いて近く出版します。
自分の思い通りにいかなくても、そこから生み出される強力な生命力をプラスの方向に用いていけば、やがてはすばらしい事に発展していくんですね。ですから、「思い通りいかなくて当たり前」なんだと割り切って、前向きに問題解決に取り組んでいきましょう。
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佐々木満男(ささき・みつお):国際弁護士。宇宙開発、M&A、特許紛争、独禁法事件などなどさまざまな国際的ビジネスにかかわる法律問題に取り組む。また、顧問会社・顧問団体の役員を兼任する。東京大学法学部卒、モナシュ大学法科大学院卒、法学修士(LL.M)。