ローマカトリック教会で承認された告解に用いることができるiPhoneアプリケーションが米教界で話題を呼んでいる。カトリックの教会では司祭の前で罪を告解する儀礼がある。福音主義キリスト教徒には牧師の前で罪を告白する儀礼はないが、罪について吟味する上で十分活用することができると米キリスト教大学教授が推奨している。
同アプリはLittle iAppsによって開発されており、実際に神父の前で告白するよりも容易に罪を告白できるのが特徴となっている。それぞれのユーザーがパスワードによってアプリケーションから個人情報が流出しないよう保護されており、それぞれのユーザーが年齢・性別・職業などを入力し、個人の状況に合わせて告解の項目をカスタマイズすることができるようになっている。また十戒についてもそれぞれがきちんと守って生活をしているかチェックできる診断ツールも含まれている。
米キリスト教大学のビオラ大学教授でニュー・メディア・フロンティア共同編集者でもあるジョン・マーク・レイノルズ氏は、iPhoneでの告解アプリについて吟味してみたところ福音主義キリスト教徒の信仰にも役立つとし、「福音主義キリスト者もカトリックの儀礼について参考にすべきところが多い。カトリックの告解アプリでは十戒をどの程度忠実に守れているかを簡単にチェックすることができる。この告解アプリのチェックリストは福音主義キリスト教徒にも完全に当てはまるものである。カルヴァンやルターもキリスト者に十戒を守れているか良く吟味し、また以下に十戒に沿った生き方ができていないかも良く顧みるべきであると勧めている」と述べている。
チェックリストでは「毎日祈りのなかで神様が介入される時間を持っているか?」「神様に対して怒りを感じてしまったことはないか?」などが示されている。
レイノルズ教授は「私たちは罪に対して敏感にならなければ、安い恵みに満足してしまうことになる。その結果日頃私たちが行っている悪い行いに対してあまり注目しなくなる。多くの人々は二つか三つの罪に捉われており、その枠組みの中だけで、自分の犯した罪について熟慮しているにすぎない」と警告している。
米ABCニュース宗教記事寄稿者のエドワード・ベック神父は「告解をする傾向が少なくなっている中で、この様な告解アプリが登場することは、人々を聖化の道に近づけるのに有意義であると思います。(神による)癒しと恵みを受ける力強いツールとなるでしょう」と述べている。
ルーテル教会や聖公会など一部のメインラインのプロテスタント諸教派では司祭や牧師の前で告解する儀式が受け継がれている。ローマカトリック教会では告解を行うときには司祭が絶対に存在していなければならないとされている。一方今年1月にはローマカトリック教会教皇ベネディクト16世がワールドコミュニケーションズデーにおける挨拶でカトリック教徒らに、新たなメディアテクノロジーの恵みを享受し、デジタル世界においてテクノロジーを良く用いていくことを奨励するメッセージを与えていた。同アプリもカトリック教会によって使用を承認されており、メディアテクノロジーを駆使した新たな信仰の道が模索されている。
福音主義キリスト教徒には牧師の前で罪を告白するようなことはなされていない。しかし福音主義キリスト教徒も互いに罪を告白し合うことをレイノルズ教授は勧めている。「聖書はイエス様に罪を告白するように教えています。そしてイエス様だけでなく互いに罪を告白し合うことを教えています。実際、ただ聖霊様のみが自分を救う力があり、ただイエス様だけが真実に自分を助けてくださいます。しかしときには兄弟姉妹がたがいに助け合い、助言を行う必要があるでしょう」と述べている。
レイノルズ教授は、自身も含め、多くのキリスト教徒が自分の罪を深く反省しないために「安い恵み」で満足してしまう傾向があると指摘し、「イエス様を信じていると言いながらも、私たちの行いをイエス様から切り離してしまえば、私たちは偽りを言っているものとなり、真実が私たちのなかにないことになります」と述べている。また同教授は「罪は深く吟味される必要があるが、それは10年以上もの長い間人の中に住むべきものではない」と指摘しており、「一度イエス様から赦しを得たのであれば、(いつまでもその罪の中でもがき苦しんでおらずに)先に進まなければなりません」と警告している。