【CJC=東京】米国を代表するジャーナリストで、CBSテレビのニュースキャスターとして活躍したウォルター・クロンカイト氏(92)が7月17日、ニューヨークの自宅で、脳疾患のため長期闘病の後、家族に見守られながら死去した。
1916年11月4日、ミズーリ州セントジョセフ生まれ。高校時代からジャーナリズムに関心を持ち、学校新聞に執筆した。62年から81年までCBSのニュース番組「CBSイブニング・ニュース」のアンカーマンとして活躍した。
ジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件やマーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の暗殺事件などを、冷静な視点から報道、68年には米政府のベトナム戦争政策を非難、リンドン・ベインズ・ジョンソン大統領に大きな影響を与えたと言われる。81年3月に番組降板後も、CBSやCNNなどの特派員や執筆活動を通じてジャーナリストとしての活動を継続した。またジャーナリスト養成学校で、後進の育成にあたった。
バラク・オバマ米大統領は17日、「クロンカイト氏はその日の最も大事な問題に我々を導いてくれる信頼できる人物だった。この国は大切な友を失った」との声明を発表した。「CBSニュース、ジャーナリズム、本当のところアメリカをクロンカイトなしにイメージ出来ない」とCBSニュースのショーン・マクナマス会長は語っている。
米国の宗教右派、特にその有力指導者に対しては厳しい意見を持っていた。信仰と自由の擁護団体『インターフェイス・アライアンス』(IA)に寄せた書簡で、個人的な意見を言わない時は過ぎ去ったとして「パット・ロバートソンやジェームズ・ドブソンのような人の、国の政治指導者に対する危険で増しつつある影響力に私は非常に不安なので、発言しなければならないと思う」と述べていた。
ただ、著名な大衆伝道者ビリー・グラハム氏はクロンカイト氏を「ジャーナリズムの世界で得た親友の1人。彼はある種の偶像だった。アメリカ人の心と魂の中で、彼に代わりえる人がいるだろうか、と思う。多くの問題について、私は彼の見方に敬意を払った」と声明で述べている。
クロンカイト氏は、IAに宛てた書簡でさらに「私は、発言の自由が私たちの国の基本原則であることは理解しており、自分の思いを発言する勇気のある人を尊敬する。しかし信仰に関わりを持つ1人として、宗教右派のグループが、自分たちの不寛容な政治課題を推進するために宗教を利用することを、警戒しながら見つめてきた。長年にわたって、彼らは政府の全てのレベルで相当の影響力を獲得してきた。地域の学校理事会、行政機関、裁判所、そして議会でだ。彼らは宗教が伝統的に果たしてきた癒しの役を、不寛容に政治的な綱領に、抜け目なく作り変えた」と述べている。