【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は8日、5月8〜15日にヨルダン、イスラエルとパレスチナ自治区などを訪問すると発表した。バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ広場に集まった巡礼や観光客を前に恒例の日曜接見で語った。訪問は、公式にはヨルダン国王、イスラエル大統領、パレスチナ自治政府大統領、聖地のカトリック教会の招待によるもの。
教皇が同地域を訪れるのは00年の前教皇ヨハネ・パウロ二世以来。教皇は、ヨルダンでは首都アンマンを、イスラエルでエルサレムとナザレを、パレスチナ自治区ベツレヘムなどを訪れミサを行うほか、イスラエル、自治政府代表と会談する。
ヨルダン・カトリック教会筋は、教皇が首都アンマン南方のネボ山を訪問、イエスがバプテスマのヨハネから洗礼を受けたとされるヨルダン川畔に立つ教会の献堂式典を行う、と語った。
エルサレムでは、ホロコースト(ユダヤ人虐殺)被害者記念施設『ヤドバシェム』を訪問する。ヨハネ・パウロ二世も2000年に訪問した。ただホロコースト記念博物館には立ち寄らない予定。同博物館にはピオ十二世の写真が飾られているが、それには「ユダヤ人絶滅を非難する連合国の宣言に署名することを控え」「戦争中、不偏の立場を採り続けた」と説明が付いており、バチカンは「好ましくない」との態度を表明していた。カトリックとユダヤ教学者が、ピオ十二世の果たした役割について検討を進めているが、教皇訪問までにこの説明問題が決着する見込みはない。
教皇は1月、ルフェーブル派『聖ピオ十世会』の司教4人の破門を解除した際、その中にナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺を疑問視する発言をしたリチャード・ウィリアムソン司教が含まれていたことで、イスラエル政府などから強い反発を受けていた。今回の訪問はユダヤ人社会との和解を進める狙いも感じられる。
教皇は中東訪問に先立ち3月17日から23日までカメルーン、アンゴラなどアフリカを訪問するが、そのための祈りを接見参加者に求めた。