福音派の代表的な高等教育機関であるフラー神学校(米カリフォルニア州)は21日、メインキャンパスがある同州パサデナのレイクアベニュー教会で、デイビッド・エマニュエル・ゴートリー氏の学長就任式(英語)を行った。ゴートリー氏はケンタッキー出身のアフリカ系米国人。75年余り続く同校の歴史で、アフリカ系米国人が学長に就任するのはこれが初めて。
約10年にわたり同校の学長を務めてきたマーク・ラバートン氏の後任として、第6代学長に就任したゴートリー氏は、牧会カウンセリングが専門の神学者・宣教学者。同校の学長に就任する前は、デューク神学校で副学部長(学術・職業形成担当)、教授(神学、キリスト教ミニストリー)、黒人教会研究室室長を務めていた。
ルイビル大学で学士号、南部バプテスト神学校で修士号と博士号を取得。アフリカ系米国人が主体のバプテスト派教団「全米バプテスト連盟」(NBC)で按手礼(あんしゅれい)を受け、ケンタッキー州のキャンベルズビル第一バプテスト教会を9年間牧会した。その後、ロット・キャリー・バプテスト海外宣教協会の事務総長を20年以上務めてきた。
虐殺や貧困、人種差別、飢餓、不平等などの諸問題に取り組む思想家、活動家でもあり、児童の貧困撲滅を目指すNGO「キッズ・アゲインスト・ハンガー」、スーダン西部ダルフールにおける虐殺のアドボカシー活動を行う「セーブ・ダルフール連合」、米最古の公民権運動組織の一つである「全米黒人地位向上協会」(NAACAP)などで、指導的な役割を担ってきた。
ゴートリー氏は就任式で、ヨハネによる福音書3章16~21節から、「世界はわれらの村」と題して演説。世界中のキリスト教共同体を支える国際的な教育機関としての同校の将来像を語るとともに、教会に忠実に奉仕する指導者を育成するという同校の使命について語った。
「教会は良き指導者を必要としており、世界は良き教会を必要としており、それ故、キリスト教高等神学教育は今日、かつてないほど重要なものとなっています。フラー神学校には、忠実な牧師、学者、メンタルヘルスや地域社会における指導者を育成してきた豊かな歴史があります。私たちは、神が召された働きのために人々を整え備えることができるよう、フラー神学校の能力を拡大し続けていきます」
フラー神学校は1947年、福音主義に立つ超教派の高等教育機関として、ラジオ伝道者のチャールズ・E・フラーらによってパサデナで設立された。現在は、宣教・神学科と心理・結婚・家族セラピー学科の2学科があり、80カ国113教派から集まった多様な学生が学んでいる。
日本人の卒業生も多く、ワールド・ビジョン・ジャパン理事長や太平洋放送協会(PBA)会長などを務めた羽鳥明氏、JTJ宣教神学校元学長の岸義紘氏、東京基督教大学(TCU)元学長の倉沢正則氏ら、多くの福音派指導者を輩出している。
ゴートリー氏の就任式は、同校の創立75周年記念行事の一環として行われた。記念行事ではこの他、「DOE」の名で活躍しているゴスペル歌手のドミニク・ジョーンズによる歌唱や、パサデナのキャンパスツアー、卒業生によるオリジナルアートの披露などが行われた。