家庭生活を支援する英慈善団体「ケア・フォー・ザ・ファミリー」(CFTF)が2018年に行った調査によると、英国ではクリスチャンホームで育った子どものうち大人になっても信仰を持っている人は半数にすぎないという。一方、キリスト教信仰についてもっと教えるべきだと感じている人の割合は、英国民の92パーセントにも上る。
「キッチン・テーブル・プロジェクト」(KTP、英語)はこの調査から生まれた取り組みで、子どもの信仰に最も大きな影響を与える親の役割の重要性を認識させ、親を支援することを目的としている。
英伝道団体「シェア・ジーザス・インターナショナル」(SJI、英語)のアンディー・フロスト会長兼最高責任者(CEO)は、KTPの一環として新著『父子のための52の信仰の冒険』(原題:52 Faith Adventures for Dads and Their Kids)を執筆し、父親が子どもたちに信仰を伝えるよう励ましている。本書の主題は、父親が神体験を分かち合うこと。遊びや創作活動、「冒険」を通して思い出を作り、親子が共に時間を過ごすことを提案している。
英国クリスチャントゥデイ(以下、CT)の取材に応じたフロスト氏は、子育ての仕方に触れる中で、子どもの信仰形成において子育てが重要な役割を果たす理由を語っている。
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CT:CFTFの調査によると、クリスチャンホームの子どもが大人になってもクリスチャンである割合は50パーセントにすぎないそうです。なぜ私たちは、この分野で苦労しているのでしょうか。
フロスト:私たちの文化では親が専門家に頼ります。それが原因の一つだと思います。例えば、自分の子どもにサッカーやバレエを習わせたいと思ったら、プロに教えてもらおうとしますよね。
教会も同じで、日曜日の朝、お金を払って(献金して)プロの専門家(牧師や神父)に子どもたちを教えてもらっています。プロの人たちが私たち親に代わって教えてくれるので、まるでその人たちに自分の役割を代行してもらっているかのようです。でも、この1年半余りのコロナ禍で子ども向けの活動が中断された結果を目の当たりにして、家庭の重要性と親が教えることの大切さを実感しました。
課題は、私たちが親の役割を再認識することです。また、もう一つの課題として、教会が親をサポートして家庭で信仰を育むということがあります。
CT:クリスチャンの親たちは、恐らく自信がないのではないでしょうか。
フロスト:複数の原因があると思います。一つは、親のライフスタイルが完璧でなければ、子どもに信仰を伝えることができないと思ってしまうことです。当然のこととして、子どもは親が犯した過ちを知っていますので、親はまた間違いを犯すのではと恐れてしまうのです。
また、子どもたちはどんな質問をしてくるだろうかと不安になる面もありますし、自分の信仰を子どもたちに押し付けたくないという思いもあります。「自分は間違うかもしれないから、何もしたくない」という気持ちになることもあると思うのです。そのバランスを取ることが大切です。
CT:お父様の故ロブ・フロスト氏は多くの人に愛され、尊敬された伝道者でした。お父様をお手本にしながらご自身の信仰が形成されたことについて、何か思い出はありますか。
フロスト:そうですね、父との関係は必ずしも平坦なものではありませんでした。10代の頃は父との関係がうまくいかなかった記憶があります。でも、最終的には問題が解消されて、とても仲良くなりました。
今でも覚えているのですが、父は毎朝私たちと家庭礼拝を持とうとしたのです。でも、それが完全に裏目に出てしまいました。朝は学校のストレスもあって、私も兄も全然やる気になれなかったのです。
でも、父の素晴らしいところは、クリスチャンであることの意味を日常生活の中で示してくれたことでした。父はしばしば、「冒険」を通して私に手本を見せてくれました。私と兄が外で何かをしていると、いつも父は聖書の話をしてくれました。
ある晩、一緒に夜空を見上げたときのことを鮮明に覚えています。父は羊飼いと天使の話をしてくれました。私たちが見上げている星は、2千年前に羊飼いたちが見ていたのと同じ星なんだと驚嘆していました。
父は、そのような場面で聖書の物語を語ることができました。一緒に出掛けたときにこのような話を聞けたことは、私の信仰の歩みにおいて本当に大きな力になりました。
CT:本書を執筆された動機はどのようなものでしょうか。
フロスト:教会では(信仰の探究の仕方が)学問的で知的になり、授業のようになってしまう場合があると思います。本書を書いた理由の一つは、キリスト教信仰を単なる概念的なものではなく、より実践的で経験的なものとして探求することを教会に提案することです。
CT:それは、ご自身の娘さんお二人の体験に基づいているのでしょうか。本書で語られているアプローチについて、娘さんたちの賛同は得られましたか。
フロスト:娘たちはとても気に入っていて、友達にもよく話しています。子どもたちと一緒に充実した時間を過ごすために、「冒険」に出掛けたときには必ず写真を撮るようにしています。そうすることで、子どもたちはその体験を記憶にとどめ、父親と一緒に時間を過ごしたことを思い出すことができるからです。また写真は、聖書の話をする機会をつくることにも役立ちます。
私が理想とするのは、子どもたちがいつでも神様の話をするような家庭をつくることです。そうすることで子どもたちは、信仰というのは日曜日の朝だけでなく、生活のあらゆるシーンで働くものなのだと考えるようになるからです。このような「冒険」は、すべての行動において信仰が不可欠だと考えるようになる手助けをしてくれました。
CT:6月20日は父の日でした。子どもたちにとって良き信仰のお手本となろうとしているお父さんたちに、何か励ましの言葉はありますか。
フロスト:まず初めに、現代の男性には何でもかんでも正しく完璧にこなす父親、つまり「スーパーパパ」にならなければならないというプレッシャーがあります。日曜大工も、IT関連も、スポーツもです。でも、そんなことはできませんから、大切なのは、子どもたちに何を伝えたいのか、なぜ伝えたいのかを知った上で意図的に実行することです。
私にとって重要なのは、実用的な方法で「冒険」をすることであり、子どもたちのために時間を確保することです。また、具体的な方法で信仰について話すことです。
最後に、子どもたちのために祈ることについて話します。忘れてはいけないのは、究極的には神様が私たち以上に子どもたちを愛しておられ、私たち以上に子どもたちに真実であろうとしておられるということです。ですから、信仰の継承について考える上で忘れてはいけないことは、それが人間の業ではなく神の業だということです。信仰の継承において、私たちはただ自分の役割を果たしているにすぎないということです。