英国のイスラム教学生10人のうち3人が事実上、イスラム原理主義を支持することが明らかになった。
ロンドンにある社会統合センター(Center for Social Cohesion)は最近、英国キャンパス内の動向を調べるため、学生1400人を対象にした調査を実施した。その結果、イスラム教徒であるという学生の32%が、殺人が宗教の名で正当化されうると回答したことが明らかになった。中でも、イスラム社会学生同盟(FOSIS)などのイスラム教団体の会員となっている学生は、その60%がこのような回答をした。一方、非イスラム教学生でも、その2%が宗教的な理由による殺人が正当だと答えたという。
また、イスラム教学生のうち、約40%がイスラム法「シャーリア」を英国の法制度に導入することを支持しており、イスラム教系の団体で活動をしていると答えた学生では、58%がシャーリア導入に賛成した。
シャーリアには、公開処刑やムチ打ち刑、女性差別などの人権を抑圧する内容が含まれており、イスラム教徒間でもそのとらえ方で食い違いがあるという。
英国でのシャーリア導入を巡っては今年2月に、英国国教会(聖公会)の霊的最高指導者であるローワン・ウィリアムズ・カンタベリー大主教がラジオ番組内で、シャーリアの部分的導入は避け難いとも受け取れる発言をし、英国内で大きな議論が巻き起こった。ラジオでの発言後、大主教自身もその発言がシャーリア導入を提案したものではないと否定し、ブラウン英首相も直ちにシャーリア導入の可能性を否定するなど、その対応に迫られた。
同センターのハンナ・シュチュアート研究員は今回の結果を受けて、英国の大学で宗教的原理主義者が増加していることに対して警戒を要請した上で、「学生らは未来の英国社会を導くリーダーたち。しかし、その多くが民主主義とは矛盾した価値観を持っていると見られる」と述べ、「今回の結果は、英国の大学には原理主義は存在しないと信じていた人たちにとって、非常に驚くべき事実でもある」と語った。
英国では90年代半ばから移民の流入が増加し始め、移民の増加が国全体の人口増加を支えるまでに拡大している。イスラム系移民も例外ではなく、現在では英国内に約160万人のイスラム系移民がいるとされている。