シリア内戦で激戦地となった同国第2の都市アレッポ。その荒廃した町で、地元の教会が、若い夫婦と子どもたちを支援する画期的なプログラムを提供し、「希望の再建」を手掛けている。
メルキト・ギリシャ典礼カトリック教会のアレッポ大司教ジャン・クレメント・ジーンバートは、米カトリック紙「ナショナル・カトリック・レジスター」(NCR)のインタビューに応え、「新しい世代」と「新しい教会」を夢見ていると語った。
ジーンバート大司教は、アレッポの都市再生ビジョンの一環として、若者たちにより多くの子をもうけるよう呼び掛けている。「今のような世の中で、子どもを持とうとする人などいない」。アレッポではこれまで、多くの若者たちがそのように考え、子をもうけることに躊躇(ちゅうちょ)していた。そのような中で、アレッポ大司教区は、子どもが4歳になるまで、育児を経済的に支援するプログラムを整備。昨年には、100人余りの子どもの誕生を祝うことができた。
「子を持つことを恐れない家族がますます増えています」「彼らのおかげで、私は幸せです」とジーンバート大司教は言う。
ジーンバート大司教が「最も重要なプロジェクト」とするのは、「Build to Stay(定着のために建設を)」と呼ぶ運動だ。アレッポで暮らす人々に、住居や雇用、生活の場を提供することを目指すもので、最近では、若者たちが生活を取り戻せるよう、65件の無利息融資を行った。ジーンバート大司教は、国外に避難した難民が、時の経過とともに帰国することを期待しており、教会は帰国の旅費がない人々を支援したいと願っている。「家族が戻ってくれば、人々がこの地に定住し、頑張るための励みになります」。
アレッポで戦闘が収まったのは、昨年のクリスマスの3日前だったが、「とても良いクリスマス」を持てたという。「人々は5年ぶりにリラックスし、満足していました」。全ての教派のキリスト教徒が1つになってクリスマスを祝い、町に繰り出したという。「人々は状況の好転が近づいていることを予感しています」とジーンバート大司教は言う。
ジーンバート大司教は、残酷な破壊を目の当たりにしてきた。戦火にさらされるアレッポの日常や、多くの隣人、友人の死に耐え忍んだ。特に砲撃や空爆で多くの子どもたちが殺されたことは、今も忘れることができない。アレッポ大司教区もロケット砲撃を受けて荒廃し、ジーンバート大司教自身も命を失う寸前だった。
ジーンバート大司教が最も痛みを覚えたのは、多くのキリスト教徒がアレッポを去ってしまったことだ。アレッポにはかつて、約16万5千人のキリスト教徒がいたが、現在では5万5千人ほどしかいないという。キリスト教徒がアレッポにとどまる、あるいはアレッポに戻ってくるには、希望が必要だとジーンバート大司教は言う。物理的にも霊的にも町は再建を必要としている。
ジーンバート大司教は、アレッポの教会の復興に助力することを願うばかりでなく、アレッポそのものの復興のために、教会が重要な役割を果たすのを目にしている。
「この町は私たちのものです。この土地も、シリアも、私たちのものです。シリアは聖地ですから、存続していかなければなりません」「もしそのために私の人生をささげることができるのなら、それは価値あることだと思います」