【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)キリスト教一致推進評議会議長のヴァルター・カスパー枢機卿は、教理省が7月10日発表した声明「教会についての教義をめぐる質問への回答」を批判したドイツ司教団に同意する意向を示した。英カトリック週刊誌『タブレット』が報じている。声明は、教理省が2000年の宣言「ドミヌス・イエスス」で表明された「一つの本当の教会」の見解を再確認するもの。
カスパー枢機卿は、先月24日の『枢機卿会議』の前日、声明発表が「困惑を招き、不満を生じさせた」とバチカンでの会議で発言した。声明は既定の教会の姿勢を繰り返したものではあるが、「そのような宣言の公表に際しては、形式、用語、表現の再検討が望ましい」と言う。
宣言「ドミヌス・イエスス」で表明された「一つの本当の教会」の見解は、ローマ・カトリック教会の首位性を再確認するとともに、他教派を不完全なものとし、特にプロテスタント共同体などの分かれたキリスト教共同体は、聖職と聖体をめぐって主要な違いが存在するため「適切な意味では」教会でない、としたことからプロテスタント側の当惑を呼び、批判を招くことになった。
宣言は、教皇の出身地ドイツでもプロテスタントから厳しい批判を浴び、カトリック司教の中に懸念を生じさせた。
ドイツ司教会議会長のカール・レーマン枢機卿は10月の会議の演説で宣言を批判した。11月初めに開かれたルーテル派監督会議で、ドレスデン=マイセン教区のヨアヒム・ライネルト司教は、カトリック教会を代表して、ルーテル派が声明に疑問を呈することは正当だ、と語っている。 カスパー枢機卿はまた、ペンテコステ派の教勢増加の背景を考察するよう教会
に促した。
ペンテコステ派とカリスマ派が現在、世界中で約4億人に達し、キリスト教ではカトリックに次ぐ大グループになったことに注目して、カスパー枢機卿は、カトリック教会を離れる人が多数に上る理由を、司牧的に、そして批判的に検討しなければならない、と主張した。「ペンテコステ派の問題を問うことから始めるのではなく、自らの司牧の短所が何なのかを問わなければならない。典礼、教理、司牧、霊的革新によってどのように対応出来るかだ」と言う。
枢機卿は演説の後、記者団に、聖公会共同体は「非常に難しい状況」にあると述べた。米聖公会が03年に公然同性愛者のジーン・ロビンソン氏をニューハンプシャー司教に任命したことから生じた混迷は解消しないまま今日に至っており、「速やかに解決することを願う」と言う。
プロテスタント教会との関係について、困難さを増しているのは、プロテスタント側の「内部分裂」と「新しい倫理的問題で分裂が進む」ためだ、と述べた。
正教会との関係は、イタリアのラベンナで10月に行われた協議の際、正教会側が教皇の首位性を認めたことで進展したものの、全正教会裁知問題で、コンスタンチノープルのエキュメニカル総主教座と競合しているロシア正教会の地位も視野に入れなければならない、と枢機卿は指摘した。