フィリピンの大統領官邸は22日、7月27日を、同国のキリスト教系新興宗教「イグレシア・ニ・クリスト」の創立記念を祝う、フィリピン全土での「国民の祝日」とすることを宣言した。「イグレシア・ニ・クリスト」とは、タガログ語で「キリストの教会」を意味し、1914年にフィリピン人フェリックス・マナロを「神の最後の使い」だとして創立された独自の教義を持つ宗教団体。
フィリピンでは、当初から決められている祝日だけでなく、年度内であっても、政府命令によって祝日や休日が新たに制定されることがある。祝日、休日いずれの場合も、基本的にほとんどの業務が休みとなるが、祝日の場合には、仕事をしなくとも、通常の給料と生活費調整給と呼ばれるボーナスが支払われる。
フィリピンは、国民の80%以上がカトリック、10%がその他のキリスト教、5%がイスラム教という、東南アジア諸国連合(ASEAN)唯一のキリスト教国。それ故、国民の祝日は、キリスト教関係のものが多い。キリスト教関係の祝日は、年によって日付が変動することが多いが、フィリピンでは、政府が急に祝日を移動させるということもよくあること。さらには、イスラム教にとって重要なラマダン明けの日や、イスラム犠牲祭も祝日とされている。
イグレシア・ニ・クリストの支持を受けていたグロリア・アロヨ前大統領は、2009年、イグレシア・ニ・クリストの創立記念日を、国民の祝日と宣言した。同教会が創立100周年を迎えた昨年は、この日を国民の休日とし、ベニグノ・アキノ現大統領が、祝いの席に主賓として招かれた。しかし今年、大統領官邸は、「イグレシア・ニ・クリストの創立記念日は休日ではなく国民の祝日であると、09年に共和国憲法によって定められている」と宣言。そのため、フィリピンの労働省は、祝日の場合の規定通り従業員に給料を支払うよう呼び掛けている。
27日には、アキノ大統領による一般教書演説が行われることになっている。フィリピンの大統領は、任期6年で1期しか務めることができない。これが、アキノ大統領にとって最後の演説となるため、次期大統領選への国民の関心が高まっている。
イグレシア・ニ・クリストは、この教会の信徒となる以外に救いはあり得ないとする立場を取り、厳しい戒律を守らせる新興宗教。第2次世界大戦以前にはルソン島を中心とする小集団に過ぎなかったが、戦後急激に勢力を広げ、1950年末にはほぼフィリピン全土に進出。この数十年の間に数百万人規模にまで拡大し、選挙などにおいて、政治的にも影響力を持つようになってきている。