新国立劇場(東京都渋谷区)は、2014 / 2015シーズン最後のオペラ公演として、27日(土)から30日(火)まで、オペラ「沈黙」を上演する。また、それに合わせて、「沈黙」を生んだ長崎のキリスト教文化を紹介する展示も開催される。
本作は、遠藤周作の同名小説を原作に、20世紀を代表する日本人作曲家の一人、故松村禎三が自身の唯一のオペラ作品として、13年という長い年月をかけてオペラ化した渾身の作。1993年に世界初演、2000年に新国立劇場で上演されて以来、人気演目の一つとして上演を重ねてきた。本作の芸術監督を務めている宮田慶子氏の演出は、12年の初演において大絶賛を博し、今回は、舞台を同劇場の中劇場からオペラパレスにスケールアップして再演される。
小説『沈黙』は、禁教時代の激しいキリシタン弾圧を描き、信仰の本質を問うた重厚な作品。踏み絵を踏むことは神を捨てることなのか、人々の苦しみを見つつもなぜ神は黙っているのか、一人の西洋人司祭ロドリゴの葛藤を通して神の愛を描き出した不朽の名作だ。
自ら台本を執筆した松村は、オリジナルのオペラ作品を創作するために、原作に存在しないキャラクターを生み出した。「オハル」という、「モキチ」の婚約者という設定の女性だ。原作にない恋愛的要素が加えられたことで、「愛する者同士が殉教によって引き裂かれる」「殉教で別れた恋人の幻影を見ながら自らも死を迎える」という劇的な場面が描き出されている。
オペラをはじめとする現代舞台芸術の普及を目指す同劇場では、各上演に関連し、作品の理解を深める取り組みを行っている。今回の公演と合わせて開催される展示では、長崎県、長崎市、遠藤周作文学館(長崎市)、外海歴史民俗資料館(同市)が所蔵する豊富な資料の一部が公開され、「踏絵」を含む数々の貴重な史料を見ることができる。2016年に世界文化遺産登録を目指している「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を紹介する資料も展示され、長崎のキリスト教文化をさまざまな角度から理解することができる大規模な展示となっている。
展示は、オペラ「沈黙」の開場時間中のみの公開のため、公演チケット所持者のみ観覧可。公演日程などの詳細は、同劇場(ホームページ、電話:03・5351・3011)まで。チケットの申し込みは、同劇場ボックスオフィス(ホームページ、電話:03・5352・9999)まで。