【CJC=東京】今年のクリスマスにヨルダン川西岸ベツレヘムに巡礼する人たちには、イエス・キリストが生まれたとされる降誕教会(聖誕教会)が9月から修復に入っており、不便さが増すことになるかも知れない。
ただ作業員たちは、巡礼や観光客の通行や安全の妨げにならないよう慎重に進めている、と言うのは現場責任者のアフィフ・トゥウエメ氏。
降誕教会の保存状態は急速に悪化している。天井や窓からの漏水は、モザイク、床面、フレスコ画などへの浸食が著しい。今回の修復は、危機遺産指定と共に、イタリアの専門家がハイテク技術を駆使して調査した結果、緊急修復が必要とされたため。
AP通信によると、修復費用は第1段階で約300万米ドル(1米ドルは約130円)と見積もられ、パレスチナ自治政府が100万米ドル相当を負担、民間が80万ドルを拠出、残りは仏、露、ハンガリー、ギリシャなどが援助するという。
イエスが生まれたとされる洞穴を中心として、その上に4世紀に建設された聖堂を、現在はローマ・カトリック教会、東方正教会、アルメニア使徒教会が区分所有・共同管理しているが、権益を巡って対立が絶えず、聖職者同士の乱闘に発展することも再三だ。
降誕教会と関連資産群は、2011年6月に国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会によって、早急な保護が求められる危機遺産として世界遺産登録が認められた。投票は賛成13、反対6だった。
パレスチナは前年10月、ユネスコに正式加盟しており、イスラエルによる占領の影響で降誕教会を維持・補修することが困難になっているとして、国家の立場で危機遺産登録を申請したもの。登録は、イスラエル占領地の一部をユネスコがパレスチナ領と認めたことになるので、イスラエルと米国はともに反対票を投じた経緯がある。