同カンファレンスでは、イスラエル・パレスチナ和平の危機が生じている最中にあって、いかにキリストにあって希望を持ち続けられるか、また聖書観について歴史的にキリスト共同体とイスラム共同体でどのように異なる見方をしてきたのかについて議論がなされた。同カンファレンスはパレスチナの福音主義キリスト教組織であるベツレヘム・バイブルカレッジによって主催された。
最近の中東域の紛争状態について、聖書の預言と照らし合わせた見解がさまざまな世界の神学者たちから寄せられている。同カンファレンスに参加したキリスト教指導者らは、中東の混乱と終末の預言から離れて、福音主義共同体がパレスチナ人と共にイエス・キリストに従いながら、福音書の御言葉に書かれたある平和や和解、正義の道をいかに模索していけるかに焦点を置いた議論がなされた。他にもパレスチナ諸教会を力づけるための方策や、パレスチナ領土の不当な占領、パレスチナとイスラエルの間の和平を妨げる事柄について改めて認識する作業などがなされた。ユダヤ人国家建設を目的とするシオニズムへのキリスト教徒の関わりや、諸教会が中東および世界といかに和解を提唱していけるかについても議論された。同カンファレンスは昨年および一昨年にも開催されており、毎年期待以上の成果を上げてきたことが主催者から証しされている。
今年のカンファレンスでは、パレスチナ自治政府の統治下におけるキリスト教徒が、イスラエル国家が存続する権利を承認しつつ、いかに非暴力で領土占領に反対し続け、希望を伝えていくことができるかに焦点が当てられた。
海外からベツレヘムに集ったキリスト教指導者らからは、会議を通してパレスチナのキリスト教徒らがいかに日常的な占領活動による苦しみや痛みを経験し、それを乗り越えてきたかについての証しを聞き、感動したことが報告されている。
カンファレンスでは、ジョン・オーツバーグ氏、ビシャラ・アワド氏、クリス・ライト氏、ダグ・バードサル氏、デービッド・キム氏、トニー・カンポロ氏、ヨエル・ハンター氏らが講演を行った。
カンファレンスを主催したベツレヘム・バイブルカレッジは、キリスト教徒のサーバント・リーダーを養成し、中東域において、キリストの心を中心に置いた、神にある謙遜、聖書の全体性、正義と憐れみの心を持ち合せたクリスチャンを社会に送り出すことを使命としている。1979年に地元のアラブ人によって創設されて以来、毎年中東域でキリスト教の奉仕活動に興味のある学生を135人程受け入れてきた歴史を有している。
なお、同カンファレンス終了後に、パレスチナ自治政府首相のサラム・ファヤド氏はパレスチナのプロテスタントキリスト教徒がパレスチナの少数派として信仰を守る権利を認めつつも、ベツレヘム・ファーストバプテスト教会主管牧師のナイム・コーリー氏に対し、同氏の教会を自治政府として法的に宗教組織として認めないと伝えた。
イスラエルが領土を奪還する政策とクリスチャンシオニズムについて、パレスチナ自治政府がカンファレンスに敏感に反応したものと見られる。
一方、コーリー氏の教会では、アラブ人とユダヤ人の摩擦を緩和し、和解する道を模索する福音書に沿ったメッセージを伝えている。パレスチナでは、自治政府によって平和活動を行う人々と「聖戦」のプロパガンダを行う人々の間の敵意を増長させたり、反ユダヤ的な放送を日常的に続けるなどの活動が見られているという。