30日、クリスチャンアカデミー(東京都東久留米市)で開催された第68回コーヒーアワーで、福島第一聖書バプテスト教会牧師の佐藤彰氏が「震災で何を見たか~苦しみの中の恵み~」と題して講演を行った。昨年3月11日に自身の誕生日を迎えると共に震災で教会を失い、教会員とともに流浪の生活を余儀なくされた佐藤氏は、この一年間で国内外各地で講演、執筆活動に励んでいる。
これまで東京都「奥多摩福音の家」に避難していた福島第一聖書バプテスト教会員の大半は、26日福島県いわき市泉町に引っ越しを完了、新会堂完成までの仮事務所はいわき市移行するという。佐藤氏は、「福島に帰っても、福島だけど故郷ではない。避難生活から避難生活に渡り歩くだけです。一年が経過してもう慣れたのではないかと言われることもありますが、とんでもありません。もう駄目かなと思い始めた中にあって、キリスト教のボランティアは被災地でとても評判が良く、ホスピタリティが溢れているからか、いつまでも寄り添ってくれます。寄りそうというサインは私たちの何よりの糧です」と継続的なクリスチャンボランティア活動に感謝の意を表した。
福島第一聖書バプテスト教会では震災で4名の犠牲者が生じた。佐藤氏は「阪神大震災では、震災そのものの犠牲者の2倍以上にその後に亡くなられました。これから心筋梗塞、脳梗塞、肺炎、その他の病名で多くの方が命を落としていくと思いますし、生やさしいことではないと直感しています。(この震災について)『大したことはなかった』とは絶対に言ってはならないと、渦中に置かれた者として理解しております」と述べた。
福島第一原子力発電所の最も近くにある教会の牧会を行ってきた佐藤氏は、「教会がなくなって、教会が心の故郷であったことに初めて気が付きました。避難生活では出会いと別れが多すぎて、いちいち泣き過ぎました。ここで別れたら一生の別れだと思いました。初めて東京に来て、食事を作る必要がなくなり、毎日礼拝とバイブルクラスを行うようになりました。先週の日曜日に避難生活後9人目の洗礼式を行いました。『翼の教会』を9月に完成し、(立ち入り禁止区域に指定されていて)入れない故郷の境界線ぎりぎりで、わしのように翼をかって故郷の復興を祈りたいと思います」と述べた。
~震災で何を見たか?~
東日本大震災が生じた3月11日千葉県に滞在していた佐藤氏は、夫人とともにガソリンと支援用の食糧、衣料を確保し、自家用車で福島第一原発3号機爆発直前の3月14日の夜中に向かったという。佐藤氏は、被災者となった福島県民の苦悩について、「教会の一番そばに住んでいた90歳の姉妹は、自衛隊の軍用トラックの荷台に座らされ、12時間かけて、トイレ休憩1回で夜中の2時に避難所に送られました。60代の教会員の女性は震災で心臓が止まりかけ、病院で緊急手術を行った後に『入院している暇はありません。放射能がやってくるくら、一人で逃げて下さい』と言われました」と明かした。
また津波の中を泳いで助かった姉妹は「こんなに神様を感じたことはなかった」と伝えたという。佐藤氏は震災の避難生活を通じて「教会は牧師の愛する教会ではなく、神様がひとりひとりを愛されているのだということに今頃気づいたかと言われたような気がしました」と述べた。
また「何のテストを受けたのかと思いました。震災前の3月6日の日曜礼拝ではイザヤ書を引用し、ヒゼキヤ王が「国が消える」ことを恐れて預言者イザヤにお願いした箇所をメッセージとして伝えていたという。その5日後に、本当に7万人がメッセージを伝えた福島から消えて、故郷が消滅することになった。佐藤氏は「ずっと聖書の言葉を握りしめるテストを受けたのかと思いました。半端でない忍耐力を要しました。以前の家族の姿はありません。男性のほとんどが職を失い、子どもは布団をかぶって毎日泣いています。子どもの傷はおそらく一生残るでしょう。聖書が語る自己統制のテストを受けているのかとも思いました」と述べた。
次ページはこちら「今回の震災をどう見るか?」
クリスチャントゥデイからのお願い
皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。
人気記事ランキング
-
日本のカフェ文化と信仰・伝道 佐々木満男
-
とげがあるから幸せ 菅野直基
-
南部バプテスト派出身初の米大統領、日曜学校で長年奉仕 ジミー・カーター氏の信仰
-
主は生きておられる(232)2本の脚で立てた 平林けい子
-
2024年のトップ10ニュース(国際編)
-
21世紀の神学(25)AIの大災厄リスクと聖書が教える確かな「錨」 山崎純二
-
ワールドミッションレポート(1月3日):オランダ 主よ、もう一度立ち上がってください(3)
-
ワールドミッションレポート(1月5日):グアテマラ 町民を愛し守る敬虔なキリスト信者の町長(4)
-
ワールドミッションレポート(1月6日):スーダンのケイガ族のために祈ろう
-
ワールドミッションレポート(12月31日):世界宣教達成のために祈ろう
-
日本のカフェ文化と信仰・伝道 佐々木満男
-
南部バプテスト派出身初の米大統領、日曜学校で長年奉仕 ジミー・カーター氏の信仰
-
とげがあるから幸せ 菅野直基
-
石破茂首相がクリスマス礼拝に参加、礼拝出席は就任後初
-
主は生きておられる(232)2本の脚で立てた 平林けい子
-
2024年のトップ10ニュース(国際編)
-
イエスを「真のメシア」と歌ってはダメ? クリスマスキャロルの歌詞巡る対応で賛否
-
ワールドミッションレポート(1月6日):スーダンのケイガ族のために祈ろう
-
聖書に無関心な若者に向き合う教会ユース教師の物語 映画「笛を吹け」が日本語字幕化
-
【クリスマスメッセージ】私たちはクリスマスをどう捉えるべきか 行澤一人