キリスト教学校教育同盟の第95回総会が1日、フェリス女学院大学緑園キャンパス(横浜市泉区)で始まった。同日、特別プログラムとして行われたシンポジウム「キリスト教学校の将来に向けて」では、キリスト者教員の減少、後継者不足などで危機にあるキリスト教主義学校の現状と課題を4人のパネリストが提言。今後の担い手の確保・育成に向けて議論した。
パネリストは、北垣俊一氏(山形学院高等学校校長)、町田健一氏(国際基督教大学教授)、平塚敬一氏(立教女学院中学校・高等学校校長)、湊晶子氏(東京女子大学学長)。各立場で、キリスト教主義教育の存続も危ぶまれるキリスト教主義学校の現状を具体例を挙げながら説明。地方格差の拡大や、教職課程カリキュラムにおける問題点、建学精神を現代に通用する形で具現化する必要性、各学校の連携、同同盟を通した協力の必要性など様々な議題について話し合った。
北垣氏は、計65人の職員中7人しかキリスト者がいないこと、過去3年で1人もキリスト者教師を採用できなかったことなど、地方でのキリスト者教員確保の難しさを伝えた。その上で、非キリスト者との協力、キリスト者からなる学内トップの強い指導力、周辺教会との協力の必要性を強調した。
町田氏は、キリスト者教員の育成に深く関係するキリスト教主義大学での教職課程について、その問題点を指摘。教職課程に携わるキリスト者職員の少なさ、キリスト教主義学校への教員養成を目的とはしていないと答える大学が約7割もあること、教職課程カリキュラムにおけるキリスト教教育関連授業の少なさなどを挙げた。
また平塚氏は、日本のキリスト者が人口の1%に過ぎないのに対して、日本の私立高校ではキリスト教主義学校(プロテスタント・カトリック)が20%を占めていることを挙げ、その役割の重要性を指摘した。しかし、学校側がしばしばその建学の精神や理念をそのまま掲げるだけに終わっており、建学の精神・理念を現代に通用する言葉で説明し、具現化していく必要性を訴えた。
湊氏は、キリスト教主義学校における「信」と「知」の関係は、対立的なものでもなく、また「哲学は神学の僕(しもべ)である」というような関係でもなく、「キリスト教を基盤とする自由な知的探求」という関係にあることを強調。クリスチャン・コードや日々の礼拝などキリスト教の基盤を堅持しつつも、教会で直接メッセージを伝えるのとは違い、キリスト者一人ひとりの人格を通して学生へ働きかけていく姿勢が必要だと訴えた。
発題の後には、教会とキリスト教主義学校の関係をどう考えるかという質問や、より根本的な視点で生徒一人ひとりに向き合う教師の「信仰」自体が問われているのではないかという意見も出された。
同盟では昨年から、教員後継者養成プロジェクト委員会を立ち上げ、キリスト者教員を供給するキリスト教主義の大学と、教員を受容するキリスト教主義の高校間の協力をサポートする働きを模索してきた。パネリストの中からもこの動きに期待を示す発言があるなど、関係者の注目を集めている。