東日本大震災による津波を通して、被災地の養殖業に壊滅的な打撃が生じている。宮城県石巻市は震災まで全国の8割を占める生産量の「ほや」を養殖していたが、津波によって養殖イカダが全部流され、海産物の加工場が全壊、養殖業の継続が不可能になる壊滅的な被害を受けた。
産地存続の危機から抜け出すために、一般社団法人海友支援隊による「三陸石巻金華ほや・帆立復興プロジェクト」が立ち上げられた。海友支援隊では、石巻市のほや・帆立の養殖事業復興・事業維持・生産増大を目的とする支援に関する事業、漁船・冷蔵・冷凍加工場・製氷工場などの施設及び付帯危機の復興の支援事業などを行う事を目的としており、協力団体として、HOPEジャパン、オアシスライフ・ケア、およびクラッシュジャパンなどキリスト教支援団体が名を連ねている。
津波で壊滅的な被害を受けた漁場で働いていた漁師の人々が再び漁場で生計を立てられるようになることが、地元の人々、特に漁師の家族たちから切実に願われている。「被災地で漁師としての本業ができない状態に追い込まれている人々が、再び仕事ができるようになるために少しでも手伝う事ができれば」という切ない心から海友支援隊の支援活動が始められるに至った。
オアシスライフ・ケアの松田代表(日本バプテスト同盟・利府キリスト教会牧師)は、震災からしばらく経った日の朝、グーグル・アース(Google Earth)で沿岸部を見ながら祈っていたところ、一つの地域に特に目が止まったという。そこが石巻・寄磯小学校の避難所であった。さらに、その日にとある被災地支援団体から電話があり、「支援のために寄磯浜に行って欲しい」と要請されたという。このような経緯で寄磯へ赴き、寄磯漁港の復興も支援する海友支援隊とつながるに至った。
オアシスライフ・ケアでは、これまでに寄磯小学校避難所での炊き出しや、冷蔵庫や掃除機などの物資供給を行ってきたが、今後の長期的な石巻市の課題となるのは「養殖漁業」の再興にあると見ており、海友支援隊の活動に積極的に協力を行っている。
クリスチャンの支援団体と水産業支援団体の協力という異色の協力関係が構築された結果、オアシスライフ・ケアの母体となるオアシスチャペル(日本バプテスト同盟・利府キリスト教会)には海友支援隊のスタッフが日曜礼拝に参加する姿も見られているという。
水産業支援に関わっていた人々が初めてキリスト教の礼拝に参加するにあたって、礼拝では「イエス・キリストに信頼し続けるとき、苦難は失望に終わることがない」という聖書のメッセージが語られ、礼拝後には海友支援隊の稲井代表が「これまでの支援ありがとうございます。今日も元気をもらいました。どんな苦難があってもあきらめずに歩んできます」と涙ぐみながら挨拶をしたという。
そもそもオアシスチャペル自体がエゼキエル書47章をテーマ聖書箇所としており、神殿(教会)から流れ出る水がすべてを生かすということを目指して教会形成をしてきたこととも通じる関わりであるという。
オアシスライフ・ケアは、人々の今日の必要、明日の必要が満たされることに加えて、永遠の必要がみたされることをビジョンとしている。海友支援隊の人々とも一緒に祈ることを心がけており、また、聖書の御言葉による励ましを与えるためにキリスト教書籍などの贈呈を行っているという。
なお石巻市地区での養殖業が復興し、「ほや」が再度市場に出荷されるようになるには、早くても3年はかかるという。オアシスライフ・ケアは今後も「海友支援隊」の活動を支援し続けて行く予定であるという。