日本に適した新しい宣教のあり方を提唱しているいのちありがとうの会理事長で東京キリスト教学園名誉理事の堀越暢治氏(85)が14日、ウェスレアン・ホーリネス神学院(東京都台東区)の公開講座で講演し、日本語の「神」は万物に神性が宿るとする汎神論の神を意味するため、聖書の教える創造主なる神は「(相手を)否定しないと伝えられない」仕組みになっていると述べ、「日本宣教の問題点は、教会が信じるお方と教会が伝えるお方の名を神と訳したこと」と主張した。
堀越氏は、聖書の「神」という記述を、「創造主」と読み替えることを勧めている。堀越氏によると、近代日本を代表する哲学者の一人である西田幾多郎は「神」について、「宇宙は神が姿を現したもの」と定義している。つまり、宇宙がなくなれば神も存在しなくなる。一方、聖書の「神」は、宇宙を無から創造された方であり、たとえ宇宙がなくなっても存在し続ける。堀越氏は、「両者は全く違う」と話す。
堀越氏は、「神」という言葉を使わず、「いのち」を接点として聖書の教える創造主を伝える新しい宣教のあり方を提唱している。聖書の教えが福音を知らない人々を否定するものではなく、むしろその人々に希望を与えるものだと知ってもらいたいという思いが根底にある。神社仏閣の信仰が住民によく根付いている三重県四日市での、約半世紀にわたる牧会経験から生み出された知恵だ。近年、日本の半数以上の教会で年間受洗者が一人もいない中、堀越氏の教会では今年も幼児を含めてすでに17人が洗礼を受けた。
自身の宣教方法を「宣教のカテーテル法」と呼んでいる。他の部位は傷つけず、患部だけを治療する心臓手術のカテーテル法に学んだ。他宗教や相手の人格を否定せず、人々に永遠のいのちへの道を示すにはどうすればいいか。「患部」を「いのちの創造主とつながっていないこと」とし、いのちの仕組みのすごさを知らせ、偉大な創造主を発見してもらうことに焦点を定めた。
例えば、日本宣教を妨げる主要因として「祖先祭祀」がよく挙げられる。しかし、堀越氏は、祖先祭祀の本当のこころは「いのちをはじめた方への感謝」という尊いもので、先祖から伝えられたいのちは「いのちをはじめた方」、つまり創造主により与えられたものと説く。
堀越氏が強調するのは、「いのちのすごさ」だ。堀越氏は、「一番すごいのは人間のからだ」と話す。例えば耳は、空気の振動として伝えられた音をまず固体の振動に変える。それをさらに液体の振動に変え、最後は電気信号に変えて大脳の聴覚野に伝えている。現代科学でもいまだ解明されていない部分があるほど、その仕組みは極めて精密だ。「これを創ったお方が創り主」と話す。
創造主の存在を知れば、人々は自然に自分のいのちや環境がすべて創造主からの頂き物だという事実と、創造主と自分との断絶に気づく。その段階で、創造主が関係回復の仲介者として定めたイエス・キリストを紹介する。
イエス・キリストを救い主と信じて創造主との関係を回復し、洗礼を受けて主の家族になれば、次はいよいよ天国への準備が始まる。堀越氏は、「主にある人の人生は天国への旅支度」と強調する。特に受洗後は、人生の最後の目的地である天国のイメージをできるかぎり鮮明にしてほしいという。「最後に行き着くところ(のイメージ)を明確に持っていたら、クリスチャンとしての生き様がはっきりしてくる」と話す。
堀越氏は、「罪人」の代わりにイエスの用いた「失われた人」という言葉を使う。ギャラップの世論調査によると、85%の日本人が、自分が何のために生きているかわからないと答えている。堀越氏は、「創り主を発見しない限りはみなしご。土台がないから人生がうまくいくはずがない」と説き、「いのちの創り主と直結することによって、いのちの創り主に帰る」と語った。
また、日本の教会が全体の傾向として幼児教育を廃止し、老人ホームの運営に移行している現状について、「非常に残念」と話し、「(子どもが教会に)来なくなったら来られるようにすべき」と幼児教育の重要性を強調した。
いのちありがとうの会では、いのちのすばらしさを伝える講演会や研修会を開いているほか、視覚教材や書籍の販売も行っている。詳細はいのちありがとうの会ホームページ(http://elifep.com)。