東日本大震災を受け、世界各国から支援を受けてきた日本でも、アフリカのききんの深刻さについて「こんなことが同じ世界で起きているなんて信じられない」「今最も世界中のみんなが目を向けなければならないニュースだと思う」「こういうニュースを見ると申し訳なくなる」との声がツイッター上で聞かれている。
飢餓のない「美しい世界」を実現することを目的として国内外の支援・協力活動を行っているキリスト教国際協力団体の国際飢餓対策機構は、世界の食糧事情についてホームページで詳しく説明している。説明によると、世界では穀物だけでも世界中の人が生きていくのに必要な量の倍近くが生産されており、他の食べ物を合わせると有り余るほど存在しているという。しかしそのうち世界人口のわずか18パーセントでしかない工業先進国が全世界穀物の39パーセントを消費しているため、残りの発展途上国の人々への食糧が不足状態に陥らざるを得ない状態となっているという。気候変動など環境問題の深刻化に伴い、ますますききんや災害の深刻化が懸念される現状において、全世界的な食糧システムを一新する取り組みが期待される他、私達個々人の意識の変革も必要に迫られている。まずキリスト者である私達ひとりひとりが問題意識を深く持ち、行動を起こしていくことも大切であるといえる。
国際飢餓対策機構啓発総主事の田村治郎氏は、「キリスト者個人として『自分が神の御国の建設のためにここに遣わされている』という自覚をもって、世界の情勢にさらに関心を寄せること」が大切であると指摘した。世界中では多くの飢餓や貧困で命を落とし、また搾取などで虐げられている人々が存在している。田村氏は、「このような人たちに対し、生まれた国や状況が違うことを理由に単に『可哀そう』とか『仕方がない』という認識を持つのではなく、『私たちと同じ創造主のかたちに似せて作られた神の作品であることを確認すること』が大切です」と述べた。
工業先進国が全世界穀物の4割を消費している現状において、私達ひとりひとりの意識改革が世界食糧問題解決の大切な役割を成しているといえる。私達の日々の生活スタイルについて田村氏は、「善隣共生の生き方、満ち足りて生きることが大切」であるとし、「無駄をなくすことや、物事の有効活用など、工夫してシンプルライフを実践していくこと、『受けるよりも与えるほうが幸いである』(使徒20・35)という言葉を実践していくようにしていく」ことの必要性を強調した。また教会としても「たとえば、今回の東日本大震災においても、被災地への救援のPRだけでなく、緊急事態への備えや今後予測される緊急事態(災害等)が予測される時代に、いかに生きるかのメッセージを発信していくなど、地域社会への聖書的価値観に根差した生き方を提言していくことが大切だと思います」と述べた。
宣教については「霊的な必要に傾きがちな宣教のあり方に、もう一度霊的、肉体的、精神的、社会的な人の全必要に教会が応えてゆくことを確認出来たら、世界の食料問題や飢餓や貧困の問題に積極的に教会が関われます。その意識があれば(飢餓や貧困の問題の)根本原因が人の罪であることが分かり、罪の解決は主イエス・キリスト以外にないこと、つまり教会の責任であることがわかるようになってきます」と述べた。
その上で、このような問題認識を踏まえて神の国の正義に生きることができる「人財」育成が急務であるとし、「改革のためのシステムを改善しても、それに関わる人が堕落していては効果はありません。教会は、国内外に神の国の正義に生きる『人財(リーダー)』を送り出すというビジョンが必要ではないでしょうか。そのために、教会学校(CS)からクリスチャンを育成してゆくビジョンとプログラム、カリキュラムを設けることが必要です」と述べた。
国際飢餓対策機構では、飢餓の実態について子どもにもわかりやすく説明する書籍やビデオ、DVDなどを販売している。また同ホームページ「ハンガーゼロアフリカ」でも飢餓の実態が分かりやすく説明されている。