米政府によって草稿された南部スーダン独立に関する国連の決議案は国連安全保障理事会によって全会一致で承認された。南部スーダンは1980年代中盤から長年北部スーダンと紛争状態にあった。紛争の部分的要因は宗教的対立にあった。北部スーダンの大部分の住民はイスラム教徒である一方、南部スーダンの大部分の住民はキリスト教徒か自然崇拝者で構成されていた。
南部スーダン独立にあたって、世界各国キリスト教団体や音楽家ボノや俳優のジョージ・クルーニーなどの国際的著名人らがこれまでスーダンの紛争に国際的注目を引かせる活動に貢献してきた。東日本大震災でも積極的な支援活動を展開してきたキリスト教支援団体サマリタン・パースも、スーダン紛争での難民支援に積極的な貢献をしてきた。
サマリタン・パース総裁のフランクリン・グラハム氏は「ジョージ・クルーニー氏その他ハリウッドで活躍される多くの著名人の皆さまがスーダン紛争への国際的注目を引くための貢献をして下さったことに深く感謝します。スーダンに国際的関心を寄せる努力が本当に価値あるものとして実を成したと言えるでしょう」と述べた。グラハム氏はさらにサマリタン・パースなど支援団体による長年の支援活動が南部スーダン独立に大きな貢献を果たしてきたことにも言及した。
南部スーダンの自治について、グラハム氏は「南部スーダンは今後本当に独立した国となるまでには多くの支援が必要になります。米政府も疑う余地なく、南部スーダンの独立のために積極的に関わっていかなければなりません。米政府が今、独立した南部スーダン支援をただちに引き上げるようなことになれば、今後南部スーダンがどうなっていくかわかりません。欧州や国際連合も南部スーダンの今後の自治に関わっていく必要があるでしょう。国境が安全に守られるようにならなければなりません。油田開発の関連から、中国政府も南部スーダンへの投資を通じて関わっていかなければなりません。南部スーダンが機能的に動いていくには数年を要するでしょう」と述べた。
クリスチャン・ポスト(CP)によると、米バージニア工科大学は独立した南部スーダンの新たな首都となるジュバにおいて米国際開発庁(USAID)とともに農業大学の設立に支援を行っていく予定であるという。同大学政治科学科准教授のパラク・フーン氏は、「南部スーダンは国際共同体による人的・物質的インフラを整える支援が今後数十年必要となるだろう」と述べている。
8日、国連事務総長の潘基文(パン・ギムン)氏は、南部スーダンの独立祝典後に起こる事態について米ニューヨーク・タイムズ紙に対し、「貧困・治安の問題やインフラの欠如が懸念されます。南部スーダン政府はまだ独立政府としての経験がほとんどなく、初期段階にあるといえます。一方で南部スーダンの独立の今後にははかり知れないポテンシャルが隠されているともいえるでしょう。南部スーダンには豊富な原油資源があり、耕作可能な広大な土地があります。また南部スーダンの中央にはナイル川による水流があります。ですから南部スーダンは独立後、繁栄し、十分自治可能な国家として同国の国民の雇用を確保し、治安と十分なサービスを提供できる国家へと成長していくポテンシャルがあると言えるでしょう」と述べた。
南部スーダンは、2005年1月に結ばれた第二次スーダン内戦の包括的な暫定和平合意によってスーダン政府から自治を認められて以後、2011年の分離独立のための住民投票では分離独立票が圧倒的多数(99パーセント)となり、2011年7月9日に「南スーダン共和国」として晴れて独立に至ることになった。
英BBCによると、「南スーダン共和国」は既に国歌が作成されており、歌詞の内容は「神に信頼を置く」ことが記載されている他、抑圧からの解放を喜び、スーダン紛争での犠牲者を哀悼する内容が書かれているという。また2012年のオリンピックに向け既にサッカーとバスケットボールのチームが結成されており、練習が開始されているという。
9日付けの日本経済新聞社説では、東日本大震災で世界各国から支援を受けた日本政府は、これまで築いてきた信頼を維持するためにも南スーダン独立に際して目に見える貢献を果たしていくことが重要であることが論じられている。