米国カリフォルニア州にあるサドルバック教会から、今では全世界60数カ国で展開されているパーパス・ドリブン(神の目的に導かれる、以下PD)ムーブメント。聖書の原点に返り、「教会とは何か」との問いから始まるこの運動は、今、日本でも多くの教会指導者や信徒リーダーから注目を集めている。日本におけるPD運動の専属コーディネーターを務める尾山清仁牧師(聖書キリスト教会)に、日本でのPD運動の現状について聞いた。
「教会とは何か」という問いの明確な答えとしてウォレン師は聖書から教会が持つ「5つの目的」を導き出した。その目的とは、礼拝(ワーシップ)、交わり(フェローシップ)、弟子訓練(ディサイプルシップ)、奉仕(ミニストリー)、そして宣教(ミッション)である。教会がこの5つの目的に常に焦点を当て、それらをバランスよく追及し、実践することで、「新しい命を生む」ことができる健康な教会が形成される。
リック・ウォレン師は、聖書に基づいたこの5つのエッセンスにどこまでも忠実に従うことで、カリフォルニア州オレンジ郡にあるサドルバックという一つの教会で、それを具体的に実践できるフォームの形成に成功した。
PD教会へ移行する具体的な方法ついては、約半年かけて教会の目的に関する新約聖書の重要聖句を教会のメンバーとともに学んでいく方法と、リック・ウォレン師の著書「The Purpose Driven Life(邦訳:「人生を導く5つの目的」、以下PDL)」を用いた「40日キャンペーン」と呼ばれる集中的な取り組みを教会に導入するという2つの方法がある。特に後者に関しては、すでに数万の教会がこれに取り組んでいる。日本でも、PD教会への移行を目指して何らかの活動を始めている教会は、首都圏を中心にすでに20ほどあるという。
だが、40日キャンペーンを行ったすべての教会がすぐにPD教会へ移行できるほど、この運動は簡単ではない。PD運動は、方法論をただ適用させるような性格のものでは決してない。サドルバック教会は、あくまで一つのケーススタディーに過ぎないのである。多くの教会でPDを取り入れているアメリカでも、本当にPD教会へ移行したケースはまだ少ないという。そこには、教会の抜本的な変革が問われることになる。
何十年、あるいは100年近くの歴史と伝統を持つ日本の教会にPDを取り入れるときに、しばしば多くの問題が起こってしまうことは事実だ。「形式ではなく、意味(本質)」をどこまでも追求したPD運動は、現代の形骸化された多くの教会が抱える様々な問題を浮き彫りにする。そこには、必ず避けられない痛みが生じてしまう。
しかし、「だからこそ本当にPDが日本に必要」だと、尾山師は語る。「まずは個人が変わること。PDLは、最終的に一人ひとりに人生の目的があることを伝える。これまでの歴史や伝統を土台にして、PD教会は一つの目的に向かって動き出す。『健康な教会とは何か?』教会の形ではなく『本質』にみなが目を向けるときに教会は変わる」と、PD運動が、まずは信徒一人ひとりのPDLの歩みから始まることを強調した。
サドルバック教会という一つのケーススタディーを通して、具体的にPD教会を体験した尾山師は、「(日本にも)規模はどれだけ小さくてもいいから、PD教会を表す一つのモデルが早く必要だ」と訴えた。
日本でのPD運動推進をサポートするミニストリー「パーパス・ドリブン・ジャパン」(小坂圭吾代表、以下PDJ)は、PD教会への移行を指導する3人の専門講師をアメリカから招き、東京、大阪、福岡、仙台、沖縄の教会を月に1度訪問し、PD教会移行への具体的な指導を行うことを企画している。尾山師はPDJの中心的なスタッフでもある。
「PDは本当に必要。でも、すぐにはできない」今年で3年目に突入したPDJ。その壮大で険しい挑戦は、まだ始まったばかりだ。