24日午後一時半から東京都国分寺富士土地ホールにて恵泉女学園大学人文学科日本語日本文化学科教授森田進氏による講演会が行われた。森田氏は「韓国とキリスト教」という講演題目で、韓国におけるキリスト教文化の歴史的変遷、日韓のキリスト教界の比較を行った。
また韓国にキリスト教が伝わり、広まった歴史的経緯も語り、韓国という周辺国に圧迫された国であるからこそキリスト教の福音が力強く広まったことを述べた。また、朝鮮半島の地図を見せながら具体的に現在の中国、北朝鮮、韓国、日本の関係について説明を行った。
朝鮮でも日本同様に歴史上でキリシタン弾圧が生じ、その際多くのカトリック殉教者が生じたという。その後、200年程経過し、1885年にH.G.アンダーウッドとH.D.アペンセラー二人の米国宣教師が来朝したことによりプロテスタントが広まった。日本ではキリスト教カトリックとプロテスタントは同じ宗教の中の別の宗派という見方をしているが、韓国ではカトリックは「天主教」、プロテスタントは「改新教」と呼び、別宗教として扱われているという。
また当時は南北朝鮮が分断されておらず、プロテスタントの中心地は中国・日本との貿易にも地理的に適所である北朝鮮平安道であったという。
その後日本による36年にわたる朝鮮統治の時代が続き、韓国併合が進み朝鮮民族が日本文化に統合されるようになる一方、神社参拝の拒否、抗日運動も生じ、そのために朝鮮でキリスト教が力強く広まったという。現在韓国では国民の実に4人に1人がクリスチャンであるという。
森田教授は最後に韓国の現在のキリスト教について日本との比較を行った。森田氏によると、韓国では、牧師の権威が非常に大きいという。また教会信徒数が数万人にもおよぶ巨大教会がいくつも存在する。このことは、平均一教会信徒数20人弱の日本教会牧師としては驚きであり、このような数万人規模の教会で共同体としての礼拝が本当に可能かという疑問を感じるほどであるという。
また韓国では牧師は社会的に保障されたエリートで有名牧師はリゾート高級マンションに暮らしており、牧師の指導力が強大であり、ある種の恐れを感じるほどである。また大学受験のクリスチャン学生のためにクリスチャンの学生が大学合格する祈りを牧師が捧げたり、信者らも「私を社長にしてください」などと私的な祈りを堂々とするクリスチャンが多いところも日本のクリスチャンにとっては驚かされるところであるという。
なにか日本から見ると韓国の教会は自己中心的な祈りが捧げられているような感はあるものの、日本の教会には見られない「熱さ」が感じられ、日本の教会が多く学び取るべきところがたくさんあるという。
一方、韓国が日本の教会を見ると、日本のキリスト教会は静かすぎるイメージがある。また日本人は常識が強く、疑い深いところがある。もっと受け入れるものは受け入れ、喜ぶべきときは素直に喜ぶ、そのような信仰心を持つべきではないかと指摘した。ただ、日本・韓国それぞれの歴史が作り上げてきた文化の相違というものがあるので、なにか相手国のキリスト教の様相に対して軽率に批判をすることは避けなければならないことも述べた。
他にも韓国と日本のキリスト教、文化性の違いを日常的な例をあげて説明し、日韓のキリスト教・文化の相違を学ぶ貴重な機会となった。
今回の講演会を主催した国分寺市富士土地株式会社では、「聖書と人生」と題し、定期的に講演会を行っている。この講演会は1985年に富士土地株式会社前社長の富士野勉氏が始めたものであるという。次回は7月26日かつてマッカーサーが「日本に宣教師を5千人送れ」の呼びかけに応じて来日して以来50年以上在日しているケニー・ジョセフ宣教師の講演会が富士土地ホールにて行われる予定である。当日はプロジェクターを用いてキリストの福音やフランシスコ・ザビエル以降の日本の地におけるキリスト宣教の話もされる予定であるという。詳細は冨士土地?(http://www.fuji-t.co.jp ,042-324-2201)まで。