韓国の日本福音宣教会が主催する日韓宣教指導者座談会が、御茶ノ水クリスチャンセンター(東京都千代田区神田駿河台2)で12月19日にあった。日本は日本福音同盟(JEA)から具志堅総主事ら3人、韓国は日本福音宣教会(JEM)から白鍾允(パク・ジョンユン)代表ら3人が参加。座談会では、「教会の現状と宣教の課題」をテーマに、日韓宣教協力の現状をはじめ、宣教師の役割やこれまでの問題などを含めて幅広く語り合った。本文は、座談会の内容を抜粋してダイジェスト版にしたもの。
JEM(日本福音宣教会)は、90年代に韓国教会で日本宣教に熱心な信徒たちを中心に始まった。宣教活動の支援と韓国人宣教師の後援を軸に、日本宣教の再建運動を韓国教会から起こす専門機関を目指す、聖書を基盤とした福音主義の超教派宣教団体。
<参加者>
=日本=
○具志堅 聖 - 日本福音同盟総主事
○三森 春生 - イムマヌエル王子キリスト教会牧師 [IGM]
○金本 悟 - 日本福音同盟書記、練馬神の教会牧師 [日本神の教会連盟]、同神の教会保育園理事長、キングスガーデン東京理事
=韓国=
○白鍾允(BaikJungYoon) - 日本福音宣教会(JEM)代表r
○全浩鎮(Jun Ho Jin) - 日本福音宣教会理事長、大韓イエス教長老会高神総会総務、高神神学大総長
○趙 泳相(Cho YoungSang) - 日本キャンパス・クルセード・フォー・クライスト宣教師、日本同盟教団枝川愛の教会担任牧師
<司会>趙 泳相
(以上敬称略、順不同)
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祈り(三森):苦しみを与えた日本に恵みで宣教の熱意を与えてくださいました。小さな集まりを今後大きなものへと発展させてください。日本のような小さなものを心に留めてくださり、ありがとうございます。アーメン。
趙: 教団が宣教師を送り出して面倒を見る枠組みはあったが、総合的に日本宣教を研究、貢献できる専門団体はありませんでした。日本国内の宣教師の現状について、教団内の把握が限界だったが、超教派的な調査研究がJEM(日本福音宣教会)で可能になります。2004年からの宣教改革のために韓国教会から代表を迎えました。
全牧師は1995年から一時期JEMの会長として活躍され、現在は高神教団総務と高神神学大総長。韓国でもトップレベルの人物、日本に関する理解も最高の人と言えるでしょう。
白牧師は11年間のネパール宣教を経て、現在ホーリネス教団牧師に着任。JEMでも様々なサポートをなさっています。
私は韓国CCCから宣教師として来日し、日本CCCで奉仕して14年目です。宣教団体と教会の協力関係を築いていくため、教会側の窓口係をしています。無牧師教会を訪問し、日曜日には都内を中心に説教をしていました。今は日本福音同盟枝川愛の教会牧師として4年目を迎えました。
全: 韓国にも日本宣教のための小団体が多数存在しますが、JEMが一番の専門機関だと自負します。
▼日本福音同盟の存在意義▼
具志堅: 日本福音同盟(JEA)は1968年創立。福音主義の信仰に立つ教団、教派、教会で構成されています。登録教会は1900以上、JEAはそれらの連絡役です。
JEAも宣教を団体のアイデンティティとして認識しています。宣教という目的で教会が協力し合うのは大切なこと。JEAの宣教委員会前委員長が三森先生。現在は金本先生で、東京ミッション研究所の総主事でもあります。
▼日本の現状▼
三森: 最新のキリスト教年鑑によると、日本のプロテスタント教会は7200。信徒61万7053人。その中で礼拝出席人数17万6909人。牧師と伝道者が合わせて9994。統計には異端的な教会も含まれています。CIS(教会インフォメーションサービス)も似たような数字を出しています。CISは異端を省いて単立教会や宣教師の教会を含んでいるが、キリスト教年鑑にはそれらが省かれているので似た数字になったようです。
1949年の敗戦以来、教会数は増加しました。特に最初の20年は異常な勢いでした。しかし増加率は70年代から伸び悩み、ここ10年間はわずかな増加しかありません。日本の人口増加が緩やかなので、人口当たりの教会数は増え続けています。CISの調べでは1教会あたり1万6千人です。
趙: 韓国は12月初めの報告で教会5万4千、信徒は千3百万。
日本の神学大は、韓国の宣教師たちによるものも含めると50を超えますか。
具志堅: 認知されていないのもあります。
三森: 公式では30程度でしょう。
全: 昔はミッションスクールが多く建てられていましたが。
具志堅:最近は建てられていません。総数は減っています。
全: 学生数はどうか。
金本: 東京聖書学院は50人程度です。
▼教団間の連携を望む声も▼
全: 韓国の教会では福音主義、ペンテコステ派、伝道派の教会のあり方が取り上げられているが、日本の教会でこれらの説明はどのように行っているのでしょう。
具志堅: 「福音主義教会」の幅は広いが、JEAは通常「聖書信仰」という言葉で定義して括っています。「聖書は誤りなき神の言葉とする信仰」に変わりはありません。ですから「日本福音同盟」は信仰の旗印のようになっています。成長もあれば課題もあります。
福音同盟は子どもや青年伝道が弱くなってきていることに憂いと危機感を感じ、世界宣教青年大会を青山学院で行いました。日本と世界の宣教拡大のためには次世代の成長が必要不可欠です。今、リーダーシップが変わろうとしています。特に、戦後力を注いでくださった先生たちが引退期を迎えています。バトンタッチが必要です。
日本基督教団(以下日基)総議長山北牧師は福音に熱心で、伝道を推進しようという考えを持っています。ひとつの教会形成の形ができ始めているので、成長も望めると思います。ただ、私たち福音主義の教会との連携はまだまだといった段階です。
三森: ペンテコステ派の話があったが、なかなか定義も難しい。例えばJEAの中にアッセンブリーズ・オブ・ゴッドが含まれています。若干問題がないとはいえませんが、他教団と同じレベルで協力しています。加盟教会の中にはカリスマ的な働きのあるところもありますが、友好関係にあります。
「福音派」と「カリスマ派」とに分ける考えは賛成しません。むしろカリスマは一部を除いて全て福音主義だと思っています。JEAの定義は少し狭いようです。信徒の一部、特に若い人たちはその境界線を越えていると思う。私は、聖霊が分裂のためではなく、一緒になるために導いてくれていると信じています。
戦後、国内教会の4分の3が日基(日本基督教団)でした。福音派は4分の1。ところが、現在の日基は全体の4分の1。教会数は終戦後からほとんど変化していない。福音派が8倍に増えました。おそらく山北氏は危機感を感じていると思う。日基には古い伝統と歴史があり、優れた信徒がいます。だからその教会が立ち上がれば、大きな変化があると思う。いまJEAは全体の数分の一で及びませんが、もし日基が目覚めて福音に立ち返れば、私は日本全体にリバイバルが浸透すると思う。福音主義的な信仰を持っている心は多く見られます。ほとんどの信徒はそのような心を持っていると言えると思います。
▼教会の政治参加、主張と現状は対照的▼
趙: 教会の政治、経済、社会に対する影響力、関心について、イラク派兵問題などでも注目されましたが。
金本: 日本の教会全体として、福音派やNCC(日本キリスト教協議会)系も含める場合、二つの考え方があります。一つは、社会の中でクリスチャンが証をしていくべきという感覚。戦時中に証ができなかったという見方から、日本の政治に対して平和を生み出すために積極的に働きかける動きが見られます。
もう一つは対照的で、多様性の中で政治と宗教は直接的関係を持たなくても良いという考え方です。平和を主張するが、教会として日本の政治に働きかける必要はないとする考え方。主流は前者です。
趙: 11月末の国家朝餐祈祷会では、土井隆一先生の言葉に、今まで福音派は政府や政治に関して無政府主義であったが、それを反省して積極的に対話して欲しい、リーダーを育てて政治家を送り出すことを期待しますと言っていましたね。実際、政治の場で働く牧師や信徒のことも応援するべきですね。
全: 80年代、日本の福音主義が靖国反対していたのを覚えていますが、最近はどうですか。
具志堅: 参拝に関する信教の自由に関しては、JEAは関わっています。天皇制と靖国問題に関しては、JEAとNCCは平和ネットなどを通して協力しています。教会が支援する政治団体はありません。キリスト者が政治団体を作ろうとすると、そこでジレンマが生じます。
金本: キリスト者政治連盟という立候補者を推薦するところがありますが、あまり影響力がありません。
全: 韓国は統一協会が政治団体を作って活動しています。それに対抗してキリスト教団体も同様の活動団体を設置すべきだという動きがあります。しかし、個人的には牧師たちが政治団体を作ることに反対です。韓国では、公立学校で児童たちに集会などで仏像を拝ませているところがあったので、教会がそれを批判する内容を小冊子にして配布したところ、学校側が信教の自由を奪われたとして教会側を訴えたことがありました。判決で訴えは棄却されました。宗教の強要はいけないが、批判することは自由だとしたのです。主張することは権利であるとされました。
趙: イラク問題について話すと、私は派兵については反対立場だが、韓国教会には賛成も多く聞かれています。韓国教会は米国の影響も強く、経済的な理由からも賛成を選んだと見られています。
具志堅: (日本の教会の)多くは、イラク派兵に反対です。
全: 政治的、法的、歴史的背景がありますからね。
趙: 米国の宣教師たちは70%が賛成です。韓国も半分以上が賛成したときがありました。日本はほとんど反対なので、対照的です。
▼日本は韓国の協力を必要としているのか▼
全: 大切なのは、日韓の宣教協力の現状と今後の課題です。
金本: 私の教団では、修養会で奉仕者を交換しあう形で韓国と協力しています。
全: 高神教団からは宣教師夫妻15組が日本に来て、日本改革派教会に派遣されました。私の見方ですが、KEF、韓国福音同盟がJEAと協力してきました。しかし、代表者間でのやり取りではなかったので、教会間の連結に乏しかった。
白: 今日の牧師たちの意識では、韓日の更なる協力性を感じているのですか。
具志堅: 教団間で韓国側と連結しながら牧師先生たちを迎えているようです。長老派同士、ホーリネス教団同士というように、教団教会間での実施が有効のようです。非常に大切な関係ですが、努力が必要です。
白: 韓国の強み、賜物など、韓国から日本にどういった影響があったらいいと思いますか。
金本: 私は55になりますが、両親の世代だと日韓を語るとき上下関係がある。私の両親はクリスチャンでそれを避けようとするが、そういった意識は根強く残っているようです。下の世代には「KOSTA−JAPAN」などの集まりを見ると目覚しい進展があります。期待しています。
白: 韓国から1万2千の宣教師が世界に送られています。日本へは600人。
趙: 600人来ていると言われていますが、見ている限り550人は全て在日韓国人教会、韓国人のコミュニティに入ってしまっています。日本人と共に働く人たちは50人くらいです。韓国の教団指導者たちは日本のために再配置させなければならない。
日本の教会は欧米宣教師たちの貢献が大きいと思います。韓国教会が日本に深く関わっていくためには、具体的で細部にわたる再構築が必要でしょう。日本に神学的なサポートをすることができないでいるのが現状です。神学の先生で韓国人はほとんどいない。
全: 宣教師たちを批判せざるを得ないですね。アジア各地から現地の指導者たちに話を聞くと、韓国の宣教師たちと一緒に働くことに困難を感じていると報告しています。この21世紀は韓、日、中国が協力すべきです。中国も共産主義と世俗主義があり、リーダーシップにも問題がある。韓国も成長が止まっています。
具志堅: 文化への感受性。センシティビティ。隣国同士ですが、文化に対する感覚の差が大きいです。
三森: 日本も韓国も互いの文化に対する不慣れの傾向があります。日韓とも、Unityの感覚が強いですから。
全: 前回日本に来たムンソン皇后という日本人によって殺された皇后についての本を読みました。日本人の中で「反日感情を煽る作品だ」と受け止めた人たちがいたそうです。互いを意識しているだけに、こういったところで非常に敏感になります。
金本: 日本では「冬のソナタ」というドラマが人気です。心の触れ合う機会を用意すればきちんと触れ合うのです。
全: 韓国でも日本のドラマを最近放送しています。
日本から海外への宣教師は何人くらいですか。
趙: 約300人とも500人とも聞いています。この数字は日本のクリスチャン人口の0.01%で、韓国のクリスチャン人口に対する宣教師の割合と同じでした。
白: 今日ここにいらっしゃる先生たちの教会ではどのような宣教師を必要としていますか。
具志堅: 賜物によります。宣教もしてもらいたいですし、説教もお願いしたいですね。
三森: 技術、学問といった専門の賜物を持っている人がほしい。
全: 神学校の教授は必要かな。学問としては日本のほうが進んでいるという話も聞いています。
金本: プロフェッショナルの人で神学を教えている人がいれば欲しいですね。宣教のパラダイム変化を考えるべき。もし韓国の人たちが嫌われているとしたら、米国の人たちが嫌われている理由と同じだと思う。これは人種や国籍では仕切れない問題。今後研究していくべきだと思う。
三森: 日本は国際化しなければならないと思う。近くにある異文化を吸収して、理解しながら理解してもらう。それは宣教師たちを通して可能となる重要な働きだと思う。それをうまく宣教に活かしていくべきだ。
一番大きな障害は言葉の壁だと思う。バイリンガルの人材が必要です。宣教師には語学が不可欠だと思います。
趙: 現場で働いている宣教師たちの声はどうだろうか。宣教師が必要とされているのは確かです。日本の教会の中で2、3年ほど勉強すれば、多くをこなせると思う。やることは山ほどあるのだから、勝手に動かず、まず宣教訓練センターで学ぶか牧師の所で地域牧会に従事し、それから出て行くと良い働きをしていくと思う。それをしないと、同胞で集まって同胞宣教ばかりしている現状は乗り越えられない。
三森: 欧米の宣教師はそれがうまくできていて、日本の教会の中に入っていきました。
趙: 日本の教会に入って訓練を受ける。日本の教会に仕えようという心を持った宣教師を送るべきで、それを韓国が監督していかなければならない。韓国の日本宣教は98年の歴史がありますが、在日韓国人の保護や人権問題などに働き掛けてばかりだった。
金本: 「KOSTA−JAPAN」に参加した娘が、韓国からの参加者との霊的交流が本当に深められたと言っていました。
趙: 今回の宣教座談会は日韓協力の為に開かれました。韓国代表となるためには2つの条件がありました。一つは、韓国で宣教学に最も権威ある人物。これには全牧師が選ばれました。
もう一つは、韓国で最も専門的な日本宣教団体であること。だから全牧師と白牧師はJEM代表と言うよりは韓国のクリスチャン千300万人の代表としていらっしゃいました。だから、この場で日本の祈り課題も持って帰りたい。日本宣教の為に祈れればいいと思う。
白: 日本全体の宣教の現状について聞きたい。どのような賜物を持った宣教師が必要とされているのか。韓国の教会が日本の教会から学ぶべき点は何か。2つの答えを得ました。まず、文化を通じての宣教戦略。そして、日本の教会が必要としている宣教師を派遣するべきだということ。
具志堅: JEA総主事の立場から考えると、日本は教会同士の協力が必要です。文化や日本が必要としている宣教師について聞かれたことをうれしく思っています。
三森: 信者との交わりや人間関係を正すことのできる人材が必要だと思う。CCCのニューライフ運動を通じての働きなどで、私たちは地域に大きな影響力を与えられました。彼らの熱情、祈り、伝道の力がプラスとなりました。今後は短期宣教師として若い人たちも送っていただきたい。
金本: 文化の交流は非常に大きな意味があります。JEAの宣教委員会で話し合っている「宣教パラダイムの転換」とは、「お金のある人がない人を助ける」「文化的水準の高い人が低い人を助ける」という啓蒙主義の宣教パラダイムは終わったということです。青年宣教大会をしましたが、指導者、権力のある人、財力のある人たちが教えても青年はついてきません。どうすればパラダイム転換が実現するのか。共に学び、苦しみ、悩み、乗り越えていく中で、皆がキリストに触れられて大きく成長するのだと思う。
韓国の霊性が強くなったから助けるというのでもなく、どちらが優れていようとも富んでいようとも、互いの成長のために互いを必要としているという考えが双方になければ、次の世代が育たないと思う。そういった意味で、宣教師たち、良い人たちを送ってください。
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