キャンパス・クルセード・フォー・クライスト(CCC)の趙泳相(チョウ・ヨンサン)宣教師は1991年韓国CCCから日本へ派遣された。韓国CCCから日本への宣教師としては5人目だった。韓国CCC海外宣教部長として多忙な日々を送る一方で休息を求めていた趙師は、大学で日本語を専攻した夫人と一緒に日本の地を踏みたいと願っていた。ところが、日本の教会の良い部分から学びながら、日本CCCに韓国CCCの良い部分を接木したいという心を神様に知られ、結局、日本宣教の道へと導かれるのだった。
「三つの目標がある」
趙師の目標は3つ。第一の目標は大学生伝道だ。韓国CCCは'80年から日本国内の大学で短期伝道を始めていた。趙師は10年間キャンパス短期伝道の働きを続けながら、青少年の礼拝出席が少ない日本の教会の現状を残念に思っていた。
第二に、地域内の信徒の交流や家庭集会が少なく、家族に信者と未信者が共存することで円滑な信仰家庭の形成がうまくいかない家族社会、信徒の超高齢化、家庭破たんの問題を見ながら、家庭伝道の必要を強く感じたという。趙師は、「青少年伝道と家庭伝道の不足が日本の教会の停滞の一因だと思います。教会はこれらの働きを重点的にやり遂げなければなりません」と話す。
第三に、地域のいたるところに十字架を見つけられる韓国と異なり、教会を見つけにくい日本の現状を打破したいという。日本の既存教会と協力しすべての無教会地域を開拓することが究極の目標だ。
「CCCと共に歩む宣教」
趙師が初めて日本の地を踏んだ当時15人程度だった日本CCCスタッフは現在40人に増えた。米国や韓国の宣教師たちを含めると献身者は136人となり、全国7都市の大学で小さいながらもリバイバルが起こった。メンバーたちが一つとなった結果だ。趙師は「チーム宣教」を強調して、現在、大学生たちを教えるスタッフの教育訓練を助けている。
また日本に無牧教会が多いことから、趙師は無牧教会の牧会も行っている。これまでに3つの教会を自立まで導き、来年には4件目が自立する見通しという。日本人の指導者が与えられれば、次の無牧教会に移る予定と明かした。「日本の教会の不足分を埋めることを優先している」と謙遜に話す。
趙師によれば、最近の調査で10市、1729町村が無教会と判明した。このため趙師は日本の教会の最重要課題への取り組みの要請を受け、'99年未開拓地の開拓政策とプロジェクトを開発。CCC宣教の既存領域を超え、外国からの宣教師や現地教会と協力して未開拓地の伝道を急いでいる。現在、日本CCCの活動の一環として無教会の10都市のうち3都市で地域教会を始め、今年はさらに2都市を開拓する計画と明かした。
趙師は「日本の連合精神は、教会にあまり見られない」と指摘し、地域の枠を越えた祈祷や伝道の運動を起こそうと「教会の連合運動」を計画中だ。
CCCは都市単位の宣教戦略「聖市化運動」を通して韓国から教会や学生の短期宣教チームを一定の目標地域に集中的に派遣している。また、その都市の大学生伝道を地域の教会が果たすように働きかけているという。趙師は「すべての活動は現地の牧会者たちが夢とリーダーシップを持ってこそ活性化される」と協力を求めた。
2005年は、信徒代表ら地域担当者の霊的な覚醒を狙った訓練講習会を全国の都市毎に展開、強化したいという。各都市の牧会者たちが協力関係を形成する触媒となる効果が狙いだ。現在、関東地方では北東京地域(15年間)、埼玉・所沢市(12年間)、埼玉・日高市(5年間)、神奈川・平塚市(3年間)西東京市(スタート)等で都市連合の働きが起こされている。
「韓国教会から見た日本宣教」
趙師は、「これからは現地の人を対象とする宣教をすべきだ」と強調する。現在、日本で奉仕する韓国人宣教師は約600人という。趙師は、過去、韓国人宣教師は日本での牧会に困難を経験していた、と話す。日本と韓国の教会の間に深い溝があったことは事実だ。日韓の歴史的な事情が双方を精神的に疎遠にさせ、キリストの名の下にある一致の実現を遅らせてきた。
1965年日韓協定が結ばれると、韓国人宣教師は日本に自由に往来するようになった。だが、経済的に裕福な日本にとって、貧しい韓国から来た宣教師による日本人伝道の働きは受け入れられなかったという。'88年ソウル五輪で日本の韓国に対する認識の転換が起こった。国力の成長と合わせて韓国の教会はリバイバルを経験し、日本宣教に対する情熱をもった宣教師たちが日本に殺到した。趙師は、現在、韓国人宣教師たちは日本社会で心置きなく働ける雰囲気が形成された、と評価した。
趙師は、韓国と日本の教会が交流、協力するためには、互いに謙遜でなくてはならないと強調した。
「謙遜で理性的な日本の教会の雰囲気に、韓国の教会のただ外向きな積極的戦術は適合しないでしょう。日韓の文化は互いに相容れないのだから、謙遜な姿勢で互いの良い部分から学びあうべきです。互いに高慢になれば何の実りもありません。一つの例として、日本の教会は、表面的には韓国のように積極的に活動していません。しかし、これは静中動の姿勢です。謙譲の徳を尊重し、責任感が強く、推薦文化ともいうように己を隠し、他人を推薦し、立てることを美徳とします。」
「反対に、韓国の教会は大陸性、積極性、伝道熱心から、動中動の姿勢が日本の教会に誤解を招くことがあり、容認出来ず、協力し難いことがあるのです。文化や情緒の差異は決して悪いことではなく欠点でもないのですが、互いをよく知らないために失敗し、心が高慢になってしまう。韓日教会指導者たちの会議等でも良く見られるのですが、お互いがお互いを知らないから、よい協力関係が疎遠してしまうのです。」
「日本のキリスト教は455年の歴史(プロテスタント145年)ですが、減少傾向にあります。日本のプロテスタントとカトリックの聖職者の数は過去7年で8,056人減少しました(現在11,389人)。日本の牧会者たちは皆、危機意識をもっています。日韓の教会同士も今までは互いをよく知りませんでしたが、これからは新しく『霊的な韓流・日流』を作って対等な交流を始めるときが来たのです。」
韓国と日本の両政府が国際化社会の一員として都市毎に姉妹関係を締結して行政関係者や市民団体間の交流を行っていることにならい、趙氏は最近、韓国の諸教会が姉妹都市に積極的に関与、交流行事に参加し、日本人たちと宣教のインフラを構築するという戦略を構想している。趙師は、「過去、日韓ワールドカップの時にも教会が先頭に立って両国の20都市が姉妹都市となって宣教協力をしたように、韓国のすべての都市の教会が日本の姉妹都市の教会と協力関係を築き、宣教支援をするようになれば、もっと効果的であろう」と述べた。
「日本は伝道が難しい」という話も、趙師は「それは伝道をしなかったからだ」と淡白に指摘した。「日本教会は今まで各論的な伝道活動と養育の単純な方法を忠実に実行しなかった」「これからは諸教会が伝道訓練と実践をなすべきだし、もっと社会のニーズに答える教会体制を整えるべきだ」「韓国教会と交流しお互い学びあう日本教会は現在、実際にリバイバルが起こっている」と話した。趙師によれば、平塚バプテスト教会(梶井義郎牧師、日本バプ連盟)は、韓国の教会で一般的に行われる早朝祈祷や金曜深夜祈祷会、積極的な伝道活動を通して、礼拝出席者数が3年前と比べ2倍になり、昨年末頃には10人の信者が与えられるという結果を生んだ。趙師は、「この教会の牧師は、今でも山に登っては地域の東西南北を眺めて夢を抱き、モーセのように祈っています。信仰とビジョンをもって祈り、成し遂げるために一歩一歩努力すれば、(日本での伝道は)必ず出来る」と語った。