米紙クリスチャンポストによると、ハーバード大学関係の研究者らが6日、ヒト胚から幹細胞を創出しようとしていることを公表した。
AP通信によると、ボストンの小児科病院でハーバード大医学部小児科が取り組む主な研究課題は、鎌状細胞貧血、白血病、その他血液疾患の治療のために幹細胞を創出することだという。
ロイター通信によると、ボストン小児科医のジョージ・デーリー医師は「我々の研究の長期的目標は、患者の細胞組織から胚性幹細胞(ES細胞)を創出し、遺伝的欠陥を正し、修復した細胞を再び患者に戻すことにあります」と述べたという。
ハーバード大学幹細胞研究所執行委員会の1人であるデーリー氏は、病院での医療業務を監督しており、血液疾患の専門家である。デーリー氏はそのための試験的研究を開始したことをAP通信に伝えたが、研究結果がどうなったかまでの説明は拒否したという。
同研究所によると、その他同じ研究課題に取り組むダグラス・メルトン氏とケヴィン・エガン氏は、一連の審査委員会から同様の研究活動を行うことを承認されたという。
ES細胞によって、より特化した細胞組織を創出することが可能となる。確かに血液疾患治療に有用ではあるが、ES細胞を用いた研究については関係者の間で活発な議論がある。ES細胞研究では、胎児になる初期段階の受精卵から幹細胞を摘出、使用する。中絶反対団体は、胎児を殺すことになる人工妊娠中絶に反対するのと同様の理由で、命の始まりである胚細胞を利用する研究に反対している。
中絶反対団体によると、1998年に研究が開始されて以来、ES細胞研究ではなんの治療法も発見することができていないという。
一方で中絶反対団体は、臍帯血(さいたいけつ)の幹細胞を、倫理的にES細胞研究の代替として使用することができるとしている。実際、臍帯血の幹細胞を使用することによって、白血病、リンパ腫、骨髄異形成、再生不良性貧血、その他血液・免疫系の遺伝的欠陥、副腎白質ジストロフィー(副腎不全と中枢神経系の脱髄を主体とする遺伝性疾患)、クラッベ病など多様な血液疾患の治療が成功しているという。
ブッシュ米大統領は昨年12月、ES細胞に関する議論を避けるために臍帯血の幹細胞を研究に使用することを認める法案に署名した。2001年以来、ブッシュ大統領はヒト胚細胞研究のために国費を使用することを禁止している。そのため、ハーバード大のヒト胚細胞を用いたプロジェクトでは現在、研究費が数百万ドルかかる予定であるが、資金はすべて民間で賄われるという。