ローマ教皇ベネディクト16世は13日、教皇就任後初となる新書「ナザレのイエス(英語名:Jesus of Nazareth)」を出版すると発表した。同書は、イエス・キリストの生涯とその教えをローマ教皇が自己解読した神学的専門書。かつては著名な神学者であったローマ教皇が神学的観点から聖書の記述を分析している。同書についてローマ教皇は、「私が主イエスという存在を個人的に解読したものです」とコメントしており、「決してローマカトリック教会の教義を公に示そうとしたものではない」と主張している。
「(ローマ教皇になる)以前から、私は福音書に描かれている『イエス』という人物が実際に歴史上に実在した『イエス』であることを証明し、提唱したいと思っていました」とローマ教皇は同書に綴っている。さらに、「イエスの存在は決して伝説ではありません。彼は肉体を持ち、血液が体内に流れていた本物の人間であり、歴史上に絶対に実在しました。そして、彼が死んでよみがえったことも本当のことなのです」と語っている。またローマ教皇は、資本主義の行き過ぎた搾取行動と神の不在を主張するマルクス主義を同書で批判している。
教皇に就任する以前から博識な神学者として名を広めていたベネディクト16世は、教皇就任の少し前から同書の執筆を開始し、昨年9月に書き上げた。そのため、同書が「ローマカトリック教会の教義を教えようとしている本」としてとらえられる可能性があるが、そのことについてローマ教皇は「皆さんが私を批判することは自由です」と寛容な姿勢を示し、ローマカトリック教会の教義を語ったものではないことを宣言した。
全448ページからなる新書「ナザレのイエス」は、16日からドイツ、イタリア、ポーランドの書店で発売開始される予定。4月16日はローマ教皇の80歳の誕生日でもあり、注目が集まっている。一方、英語版は来月15日に出版される予定。また、同書は16ヶ国語に翻訳されて世界中に出版されるとAP通信は報じている。
さらにAP通信は、ローマ教皇が同書を1部と2部に分けて出版する計画があるとも報じている。すでに第2部の構成が練られており、イエスの誕生と十字架の死、そして復活について論じられる予定だという。