米国民は、宗教信仰が生活にとって重要で、公共政策にも宗教者が進んで発言すべきだと認識していることが分かった。大手通信社、AP通信は今年5月に世論調査を実施、今月6日に調査結果を発表した。これによると、米国民の98%が神の存在を信じると答え、調査が行われた10ヵ国中、最も宗教的な国であることが判明した。調査は、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、メキシコ、スペイン、韓国、英国、米国で、それぞれ成人1000人を対象に実施された。
米国では、宗教と政治が混合し調和していることが多い。脳死や尊厳死問題、倫理問題でも、政府は宗教的な倫理観念に基づき、速やかで大胆な行動を取る。政治家が宗教と政治の融合を試みても、世論はほとんど寛容的だ。
また、調査では、米国民の40%が、宗教指導者の政治参加を高く評価すると答えた。この割合は10ヵ国中で最も高い。
AP通信がまとめた報告では、調査に応じた市民の声として「この国の憲法はユダヤ・キリスト教思想を土台としている。宗教指導者は政治的な発言をする義務があると認識されている。発言のない宗教指導者は“役立たず”と思われるだけだ」という意見が紹介されている。
一方、61%は宗教指導者が政府の動向に影響を与えるべきでないと答えている。調査は市民の声として「この国は宗教と政治との関係が深すぎる。近年、宗教家の活動がますます活発になっているように感じる」との意見を紹介した。
バチカンのベネディクト16世が「社会の世俗化が原因で、空席の目立つ教会が大幅に増えている」と指摘する西欧諸国でも同じ調査が実施され、「神の存在を信じる」と答えた人の割合は、10ヵ国中、最低だった。
米国に次いで最も信仰深かった国はメキシコだった。だが、同国では、宗教者の政治的発言を認めない意見が主流だった。AP通信は、メキシコの歴史的な経緯が影響していると指摘する。メキシコ国民の90%以上がカトリック信者と推定されているが、教会が植民地時代に強大な権力を振るったため、教会の影響力増大を嫌う風潮がある。カトリック教会を含む宗教法人を認める憲法条文の改定も1991年になってのことで、それまで教会は法的に否定されてきた。現体制も、大統領らほとんどはカトリック信者だが、国家権力に宗教を介入させない姿勢を維持している。
米国で最近加熱している議論のテーマは、同性結婚や人工中絶、胚性幹細胞(ES細胞)研究など倫理問題に絡むことが多い。議論の場に宗教者が招かれることも多く、このことが宗教者を支持する世論の形成に貢献しているとの見方がある。