BPニュース(米・南部バプテスト連盟発行)によれば、ジョージ・W・ブッシュ米大統領の在任中、米国内の中絶件数が減少しているとの指摘が、フラー神学大学院神学部のグレン・スタッセン教授(キリスト教倫理学、神学博士)からなされた。
昨年11月の米大統領選に先立ってジョン・ケリー上院議員(民主党)とハワード・ディーン氏(同)が「ブッシュ大統領の在任中、中絶件数が増加している」と主張した際、同議員らが参照した資料は当時スタッセン教授が「25%に上昇」と発表した統計だったという。今回の発表は、米政府が管轄する医療研究機関、アラン・グットマッハー研究所(AGI)による最新の調査結果に基づいたもので、自身による当時の主張に誤りがあったことを認めた格好となった。
AGIが先月19日に発表した研究結果によれば、ブッシュの大統領就任以降、中絶件数は現在に至るまで減少傾向にある。2000年の調査では米国人女性1000人中21.3%が中絶経験者であったのに対し、'01年には約1万件減の21.1%、'02年にはさらに1万件減の20.9%にまで減った。AGIによる調査は全米43州で実施された。一方、スタッセン教授の以前の発表は、1990年代初頭に16の州で行われた調査の結果をまとめたものだった。
スタッセン教授が「ブッシュの政策は中絶抑止に貢献した」との主張を発表し、以前の発表を事実上撤回したのは先月25日のことだった。その数日前、米放送局NBCの番組に出演したハワード・ディーン氏は、スタッセン教授の当時の統計を再度引用しブッシュ政権を批判していた。
ただ、中絶件数の減少と大統領の政策との直接的な因果関係を証明する報告は現在のところ、どこからもない。また、1977年に創設されたAGIによれば、1990年代より国内の中絶件数は減少し始めていた。シャロン・キャンプ・AGI代表は「大統領による政策が中絶件数の減少にどの程度貢献したかについて議論するには時期尚早」と文書で見解を述べている。