全国各地でホームスクーリングをおこなうクリスチャンホームのために、地域の小規模ネットワークを生み出す支援活動を行う、全国クリスチャンホームスクール支援センター(アージック、AHSIC=Association of HomeSchoolers in Christ)が20日から21日、フレンドシップハイツよしみ(埼玉県吉見町)にて、春の一泊ホームスクーリングセミナーを開催した。全国各地からホームスクーリングの実践を志すクリスチャンたち、10家族35人が参加。アージック代表を務める吉井春人師(東京・日野バイブルチャーチ主任牧師)が中心となって「聖霊に喜ばれるホームスクーリング」をテーマにセミナーを行い、ホームスクーリングの現状と課題について語り合った。
「ホームスクーリング」とは一般に、「子どもの教育を他人任せにせず、家庭をベースに、親が責任をもって指導する」学習の形態のこと。アージックはクリスチャンによるホームスクーリングの重要性と必要性を訴え、その地域社会における定着と促進を目指してセミナーや祈祷会などの支援活動を行っている。同団体が掲げるビジョンは、「イエスキリストを中心とした教育」、「親による教育と指導」、「国家の教育統制からの自由」の3点。今回は、「あなたにゆだねられた良いものを、私たちのうちに宿る聖霊によって、守りなさい(テモテ1:14)」を主題聖句とし、ホームスクーリングを守るために反対者たちに対してどのように対処していくべきかについて話し合った。
2日間に渡って行われたセミナーでは3つのポイントについて話し合った。一つ目は、周囲の反対(親、教会、地域など)に対してどのように対応していくのかということだ。話し合いの中では、ホームスクーリングに対する反対意見が未だに多いことが指摘され、特に教会や親族からの反対が強いという現状が浮き彫りになった。中にはホームスクーリングをカルト的な活動として見るものもいるという。このような現状に対して吉井師は、「神さまの御言葉に従い、主がくださった『良いもの』を守っていくことが大切」と主張。学校教育そのものを批判するよりも、主が与えてくれた「家庭」の大切を再認識し、「自分たちが何を守り、何を信じているのか」ということに対する明確な信仰告白をする必要があると述べた。
2つ目の講義では、「ホームスクーリングを通して何を回復させるのか」という点について話しあった。吉井師は回復させるべき事柄の優先順位について提唱し、参加者らに再認識を呼びかけた。最も優先すべきことは「神さまの栄光の回復」、つまり主イエスに仕えるものになるということだ。ホームスクーリングを通して子どもたちに主イエスに仕えることが第一であることを教え、人生の目的を明確にさせること。吉井師は成績や学歴中心主義になっている現代の学校教育のあり方を危惧し、人間の生とは「神に栄光を返すための人生」であることを訴えた。
2番目に優先すべきことは「信仰生活の回復」だ。学校教育はそもそも信仰と教育を分断させるもの。しかし、「信仰と教育が一致する内容の学習を子どもたちに提供することが重要だ」と吉井師は話す。信仰と学校教育の二重基準に陥り、「教会では神を信じ、学校では神を信じない」という現象が起こることを避けるためにホームスクーリングが必要になる。3番目は「親子関係の回復」。「学校教育のために親子の信頼関係が崩れやすくなる。学校では父と母とのコミュニケーションが大切にされない」と吉井師は指摘する。「彼は父の心を子に向けさせ、子の心をその父に向けさせる(マラキ4:6)」にあるように、親子の間のコミュニケーションを回復させなければならない。
3つ目の講義では、吉井師が安倍内閣による教育基本法の改正とホームスクーリングの関係性について語った。同師は、教育基本法の改正によって「思想・信条の自由」「良心の自由」が侵害されること、個人の尊厳が無視されて国にふさわしい人材が育成されることなどを警戒し、その問題点と危険性について指摘した。
一連のセミナーを振り返り、吉井師は、「これからホームスクーリングを始めようとしている方々に聖書的な基礎を説明をすることが出来た」、「ホームスクーリングに理解のない周囲の反対者に対し、クリスチャンとしてどのような対応をしたらいいのかヒントを伝えることができた」、「全国に点在するホームスクーラーたちがお互いに事情などを分かち合う交わりの時を持つことができた」と話す。また、親よりも子どもたちのほうがホームスクーリングについて積極的になってきている家族が現れ始めたこと、ホームスクーリングで育てられた世代が奉仕者として加えられてきたこと、父親がホームスクーリングに対して一歩乗り出してきている家族が増えてきたことなど、いくつかの発展的な事実が明らかになった。
吉井師は今後の課題として、現在各地域に形成されているホームスクーリングファミリーの小規模なネットワークが全国に展開され、地域教会に仕えてその活性化のために用いられていくべきだと語った。さらに、教会との関係回復のために、ホームスクーリングの重要性と必要性を教会の指導者たちに証ししていくことが必要だと語った。今のところ、クリスチャンによるホームスクーリングの活動を批判的に見る牧師や教会関係者が多いのが現状。そのため、子どもたちがホームスクーリングを通して健全に成長し、教会にも積極的に献身するようになった事実を証しし、認めてもらうことが大切だという。また、ホームスクーリングを促進するための教科書や指導書の必要性についても吉井師は指摘した。
アージックの今後の目標は、各地域にあるホームスクーラーたちの小規模ネットワークを全国に展開すること、子どもたちの年代別にネットワークをつくること、父親と母親それぞれのネットワークを形成することなど、ネットワークの多様化だ。子どもたちの修学旅行や研修旅行など、個々のニーズに応じたプログラムも必要だという。
「一番大きな問題は、クリスチャンたちがよく理解してくれないということです。ぜひこの働きを知っていただき、理解をしていただければと思います。ホームスクーリングがキリスト教を土台とした全うな働きであることを知ってもらいたいです」と吉井師は呼びかける。
今回は昨年度に続いて第2回目の春の一泊セミナー。当日は祝日だったこともあり、いつもは仕事で祈祷会などに来ることが出来ない父親たちの参加が目立った。ある父親は、「参加する以前は、『本当に親が家庭で子どもに勉強を教えられるのか。教える能力があるだろうか』と不安視していたこともあったが、今回参加してみてもやもやしていた部分がなくなり、はっきりと理解することができた」と語った。
現在アージックは、東京(代々木)、関西(神戸)、長野(下伊那)、新潟(巻)、茨城(水戸)にて定例の祈祷会を行い、小規模ネットワークの促進と発展を目指している。次回は4月9日に東京・代々木にて祈祷会が行われる予定。詳しくは、アージックのホームページ(http://www.ahsic.com/)まで。