エジプトで30年間政権を握り続けていたムバラク大統領退陣を求める反政府派のデモが生じている。ムバラク氏は混乱を鎮めるため9月退陣を表明するも、反政府派は即退陣を求めデモを続けている。
世界福音同盟(WEA)はエジプトの政情不安を受けエジプト福音同盟(EFE)と連携をとり世界諸教会にエジプトのための祈りを求めている。皮肉なことに、国家が危機的な状態になることを受け、エジプトの福音主義キリスト教徒、コプト教徒およびローマカトリック教徒など異なる宗派がひとつになり、家庭教会で熱心に祈りをささげるようになっている。WEAではキリスト教徒とイスラム教徒がひとつになって、神に栄光を帰するためにエジプト国家の現在および将来の繁栄のために祈るように呼び掛けている。
エジプトでは30年という長期間にわたる独裁的な政権ゆえに国内の汚職問題、貧富の拡大が慢性的になった結果の数十万人規模のデモとなったが、ここまで長期間の独裁政権がまかり通ってきたことを受け、大統領退陣後の新たな政権・新たな指導者については有力候補が見つからず、移行過程での混乱が懸念されている。エジプト国内キリスト教徒の間ではイスラム教団体「ムスリム・ブラザーフッド」が政権を握るようになることで、同国内のキリスト教徒への迫害がさらに深刻になることが懸念されている。
EFEは、現政府および今後のエジプト政権に神様が知恵を与えてくださるように、世界諸教会に対し祈りを求めている。エジプトの例に見られるように、独裁的な政権に対し、その悪を指摘し、暴動を起こすことは国民感情として容易に理解できる。しかし暴動を起こした後、新たな政権・正しい政治を行っていく道筋が立てられていなければ、暴動によってさらなる混乱が増すばかりとなる。
「少しだけ蒔く者は、少しだけ刈り取り、豊かに蒔く者は、豊かに刈り取ります(2コリント9・6)。」−私たちはそれぞれの国で福音の種を蒔いている。インターネットテクノロジーの発展により、誰もがパソコンとインターネットアクセス環境さえあれば、日本中そして世界中に福音の種を豊かに蒔く宣教師となることができる時代となった。より効果的なオンライン宣教の道が世界キリスト教団体により模索されている。福音についてパウロ使徒は、「御霊と御力の現われであり、人間の知恵から出たものではなく、神の力によってささえられているものです。この世の知恵でもなく、この世の過ぎ去っていく支配者たちの知恵でもない隠された奥義としての神の知恵であり、神が私たちの栄光のために、世界の始まる前から、あらかじめ定められたものです」と述べている(1コリント2章)。
エジプトで今後の政権への懸念が高まる中、エジプトのクリスチャンたちの動きを、今の日本の政権にもあてはめて考えてみてはどうだろうか。日本の財政問題が深刻化する中、米格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)は日本国債格下げを行った。日本の場合は変化がじわじわと起こり、またその国民性からも暴動が起こりづらく、「湯の中の蛙」のように政権を見過ごしがちである。
国際社会からは、今回の日本国債格下げを起爆剤として、政府の財政再建への一層の努力が期待されているのではないだろうか。2012年度予算編成についても非常に厳しい財源状況の中行わなければならない立場にある菅政権―エジプトのクリスチャンがひとつになってエジプトの現在そして将来の繁栄のために祈る姿に倣い、私たち日本のクリスチャンも日本国家の現在・そして将来の繁栄のため、現政権・将来の政権指導者たちに「神によって支えられた知恵」が与えられるためにひとつになって祈ることが求められているのではないだろうか。そして世の支配者の知恵によらず、神の力によって支えられた知恵による政権・国家が繁栄するためにも「望みをもって耕し、御霊のものを蒔き続ける(1コリント9)」私たちクリスチャンでありたいものである。