JTJ宣教神学校国際部学長、マウントオリーブミニストリーズ代表などを務める中野雄一郎師が19日、JTJ宣教神学校にて「サーバント・リーダーシップ」の公開授業を行った。巡回伝道者として世界中を渡り歩く同師の講義を聴こうと、同校の卒業生や教会の指導者らを含む約60人が参加。中野師は、自身の牧会経験や体験談を交えながら理想の指導者像について説き、「これからの時代の指導者はサーバント・リーダーにならなければならない」と語った。
「サーバント・リーダーシップ」とは、「まず先に相手に奉仕しその後で相手を導く」という実践哲学。米国では10年前ほどから新しいリーダーシップのあり方として注目され始めた。その後は欧米を中心とした優良企業で広く取り入れられて実践されるようになったが、日本の企業にはまだ本格的に浸透していないという。
サーバント・リーダーシップの理論は、新約聖書のマタイによる福音書20章25〜28節の、「あなたがたの間で偉くなりたいと思う者は、みなに仕える者になりなさい。あなたがたの間で人の先に立ちたいと思う者は、あなたがたのしもべになりなさい」というイエス・キリストの教えに基づいて提唱されたと言われている。中野師はピリピ人への手紙2章6節に触れ、「神の御姿である方にもかかわらず、神のあり方を捨てられないとは考えずにご自分を無にして仕える者の姿をとられた、キリストの謙遜さにしたがって生きる指導者こそサーバント・リーダーである」と説いた。
また中野師は、「人間は権力と地位を得るとすぐに威張ろうとする。人間とは傲慢(高慢)な存在である。自分を高くしようとするのが人間の特徴」と指摘。その上で、「指導者は常に謙遜な姿勢を意識しなければならない」と語った。続いてピリピ人への手紙2章9節に触れ、「自分を捨てて無にしたことでキリストは高くあげられ、すべての名にまさる名を与えられた」と謙遜の極みについて明らかにし、「低くすることで高く上げられる」と強く訴えた。
さらに中野師は、「サーバント・リーダーになるには権力を委譲しなければならない」と述べた。教会では牧師や伝道師が権力を持って信徒たちを指導しようとするが、その権力を信徒たちに委譲し、信徒が信徒を牧会することで教会は大きく成長していくと説いた。米国では実際に、95%の割合で、牧師ではなく一般信徒が新しい人を教会に導いているという。「教会の成長は牧師ではなく一般信徒にかかっている」と中野師は語った。
「不満を言われてもじっと耐えて『にっこり』と受け入れる人はサーバント・リーダーになれる。苦労をすれば一流になれる。教会も成長する。しかし99%はそれができない」。最後まで謙遜に仕えようとする忍耐力と現場での行動力がサーバント・リーダーに求められると中野師は主張する。中野師自身も、教会で牧会していた頃は常に外に出て人に会うなど、徹底した「現場主義」を貫いたという。非常な忍耐と苦労を重ねながら一人一人の信徒と向き合あい、人々を救いに導いてきたことを中野師は証しした。
「教会を運営するには現場に立ち、現場を知ることが大切。そこに全ての答えがある」と中野師は語る。「サーバント・リーダーは背中で指導しなければならない」と参加者らに呼びかけ、「牧会」とは理論ではなく実践であることを訴えた。
中野師は米国ハワイ州のホノルル市に自宅を持ち、マウント・オリーブ・ミニストリーズの代表として年中世界を飛び回りながら巡回伝道や講演会を行っている。他方、JTJ宣教神学校の国際部学長として同校で教鞭もとるなど、その活動は多岐にわたっている。