前回60歳以上の世代で近年特にインターネット利用率が高まっていることを取り上げた。「年配の方々もインターネットで調べものをすることが増えたのか」と思うかもしれないが、主因は違う。
ほぼどの世代でもインターネットに接続できる端末の普及率は、携帯電話(全世代74.8%=総務省・平成21年通信利用動向調査)がパソコン(同66.2%)を上回る。この傾向は60歳以上でより顕著だ。一方、携帯電話の利用目的は「電子メールの受発信」(54.5%)が最も多く、逆にパソコンは「ウェブサイトなどの閲覧」(55.8%)が最も多い。
つまり、60歳以上の世代で電子メールの普及が急速に進んだことが、この世代のインターネット利用率を高めたと見ることができる。インターネット=ウェブサイトと連想してしまいがちであるが、電子メールもインターネットが提供する大きな機能の一つだ。教会でインターネットを有効的に活用することを考えるとき、「教会のホームページ」を作ることも重要だが、電子メールの利用にも目を注ぎたい。
■ 教会内コミュニケーションツールとしての「メール」
電子メールによるコミュニケーションの特徴としては、1)非対面性、2)直接性、3)脱場所性、4)即時性、5)正確性、6)簡便性、などが挙げられる。対面状況では伝えずらいことでも、直接相手に伝えることができ(非対面性・直接性)、電子メールを使える環境であれば相手がどこにいてもすぐに伝えることができる(脱場所性・即時性)。また、文字でのやりとりであるため内容が正確になり、文字を打って送信するという簡単な方法で伝えることができる(正確性、簡便性)。
今年度から学校が使用を義務付ける携帯電話「制携帯」を導入した須磨学園中学・高校(神戸市)では、6月に生徒会による報告会が行われた。導入前は反対意見が多かったが、生徒会長(15)は「制携帯のおかげで先生に相談しやすくなった」(産経新聞)と率直な感想を語った。また、同学園の広報担当は「非常に順調で、効果的になっています。教員と生徒のコミュニケーションが楽で密になりました。生徒も、家で勉強が分からないときは、教員にメールすることが増えています」(J‐CAST)と語る。
教師と生徒は毎日学校で会うことができる。しかし、他の生徒らを気にすることなく、また学校という空間に制限を受けることなく先生に直に相談できるという電子メールの特性が、教師・生徒間のコミュニケーションを活性化させたようだ。
教会でも毎週日曜日に会う機会はある。だが、信徒からの相談を受けるために牧師がメールアドレスを積極的に公開したり、信徒間でもメールアドレスの交換を促進して電子メールで祈りの課題を共有するなどすれば、教会内のコミュニケーションがより活性化する余地は大きい。
一方、電子メールの特性がデメリットとして働く場合もある。直接対話する場合と違い情報を一方的に発信するため、相手の表情や反応が見えない。また伝えたい内容は文字だけでは表現できない場合も多くあり、思わぬ誤解を招いてしまうケースがある。電子メールの特性を生かしつつも、実際の「交わり」を促進、補完する一つの手段として捉えることが大切だ。
■ 伝道ツールとしての「メール」
教会外に向けた伝道ツールとしてはどうであろうか。当たり前ではあるが、電子メールを配信するには相手のメールアドレス情報が必要だ。そのため、電子メールは新しく人を教会に導くツールではなく、一度教会を訪れたり、あるいは教会のウェブサイトを訪問した人をフォローアップするツールとして認識することが正しい。
礼拝や教会主催のコンサートなどに新しく人が来た際、名前や住所を書き残してもらって教会のイベント案内などを郵送することはどこの教会でも行っていることであろう。この案内の発送を郵送から電子メールに変更、あるいは郵送か電子メールかのどちらかを選択してもらうようにしてはどうであろうか。書き残す側にとっては住所よりもメールアドレスのほうが手軽で抵抗感も少ない。また発信する教会側も郵送した場合に比べて、時間とコストの両面でメリットがあるはずだ。
教会で定期的にメールマガジンを発行することもお勧めだ。教会のウェブサイトがあり、サイトに訪問者があったとしても、その訪問者が教会までつながらなければサイトが果たした伝道の実りは「0(ゼロ)」だ。ウェブサイトでメールマガジンの購読を案内し訪問者が購読をすれば、ウェブサイトを訪問した人々に対しても「フォローアップ」が可能となる。(つづく)